春 秋 游 吟 31
2017年立春より
何処より かをりながれて春立つ日 立春 薔薇=冬薔薇、チビ弔いの墓標に植えたクリスマスローズ。 頂門=頭上。「ちび」は愛猫。
薔薇蕾む「ちび」一周忌の頂門に
ひとすぢの ながれに匂ふ春の宵
二月八日花洎夫藍(くろつかす) 一番花開く(昨年は睦月二七日開花) 花洎夫藍(くろつかす)は西風(にし)のわななき顕(あらは)なり 花洎夫藍(くろつかす)=ボタニカルクロッカスのことで、でその原種。
冴え反る 碧空一点の雲もなし
寒気紅(ぐ)蓮(れん)「不連続線」の虚空(そら)のさま 「不連続線」= 制作中の汎美展出品作「蜃気楼・不連続線」
釈迦涅槃会二句 涅槃会(ねはんゑ)や太白星の真皎(ましろ)かげ 涅槃会=釈迦入滅の日。二月一五日。 皎は輝く白、「かげ」は古典では光の意。
涅槃図の白毫(びやくがう)とまがふ太白星 太白星=金星。宵の明星。 白毫=仏の眉間にある宝玉。
春の金星、その位置いよよ高し 春の金星
金星はうぇぬす 春、ぼちちぇりの「うぇぬすの誕生」 そは うぇぬすの肌(はだえ)のごとく皓(しろ)い輝き ぜふぃろすの風に乗って ぺろぽんねそすへ春をきたす 白毫=仏の眉間にある宝玉。 うぇぬす=ヴィーナスのラテン語 ぜふぃろす=西風の神。 ぺろぽんねそす=ペロポンネソス半島。 エーゲ海へ突きだした希臘半島の南部。
金星は太白星 佐保姫の胸の皎(しろ)さもて 春一番に乗れば武蔵野に南風(まぜ)凶暴に 太白星を吹き上げた かぜ去りて春霞 やはらかく 匂いに充てり うぇぬすの睛(ひとみ)は澄んだ青 佐保の眸(ひとみ)は焦げ茶色 皓(しろ)き光 その位置を高みへと
下萌えや南風(まぜ)一陣に彩(いろ)さやか 雨水
春疾風(はるはやて) 冬の暗澹一掃し
春疾風(はるはやて) はなの矜恃を掠め去り
はな散らす 夜来風雨や暁けの夢
彌生朔日 辛夷の蕾割れる 辛夷(こぶし)白む かげは朧(おぼろ)に宵の星
啓蟄も待たず目覚めの土龍塚(もぐらづか)
春雨二句 春雨を溜めて小枝(さえだ)は虹のはな
小糠雨 深む春愁 宵のころ
土啓(ひら)く なべて生命(いのち)の蠢(うごめ)きて 啓蟄
あめひととき紫だちて春梢
秋彩を遙か夢見に春あけぼの
彌生九日、蝶初めて舞う 初蝶(うひてふ)の舞い覚束(おぼつか)なかぜにほふ
いづくより ふと沈丁花(ぢんちやう)の薫りきて
柃(ひさかき)の匂ひぞめなる宵のかぜ 柃は不思議にも生瓦斯の臭いが立つ。 しかしその臭いにはしみじみと春を感じる。=あでやかで麗
二〇一七汎美展・春の訪れ二句 乃木坂に はなやぐ男女(なんによ) 春麗(はるうら)ら
六本木をみな嬋娟(せんげん) はるの風 嬋娟=あでやかで麗しい。
上野やま ひとうるはしや春陽ふる
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