「わるいけど、この荷物つけといてくれ」
　たとえばその荷物が、今買いものをして、まだ代金を払っていない品物だったとしたら、代金をつけ払いにしてくれと言ったと思ってしまいますよね。でも、山形県（少なくとも庄内地方）では、「荷物を車に積んでおいてくれ」と言っているのです。
　バンド活動をしていると、器材を運ぶことも多く、この言葉がひんぱんに飛び交います。「このアンプとキーボード、どっち先につける？」などと。
　「車につける」と言えばまだわかるのですが、ただ「つける」と言われると、いまだにめんくらってしまいます。でも相手は「え、わからないの？」という顔をします。というか、それ以外の言葉が思い浮かばないようなのです。
　それとも「つける」は普通にどこでも使われていて、ぼくだけが知らなかったのか？
　でもなぜ「つける」なんだろうと考えて、はっと気づきました。
　馬や牛の背に荷物を載せて運ぶ場合は「荷をつける」なのです。牛馬の背に荷を運ぶための鞍を載せ、その鞍に荷をくくりつける。ただ乗せただけでは運べませんから。馬や牛が三輪車や軽トラに変わっても、言葉はそのまま残ったのでしょう。
　そう思うと、日常生活の中に、時代劇が残っているようで、ついニヤリとしてしまうのです。
　方言の中には、方言と思わず全国共通語だと思っている言葉もありますよね。山形県で有名なのは①や（１）を「まるいち」「かっこいち」ではなく、「いちまる」「いちかっこ」ということかな？　県外で生活した経験がある人が口々に「驚いたっけ」と話題にします。