東京五輪の前途多難を思わせる内外の動きに関する情報をお届け致します。
(I)「小池都知事を襲う五輪崩壊ドミノ!豊洲でゼネコンが受注拒否の衝撃」と題する11月17日つき週刊ダイアモンド記事
小池都知事を襲う五輪崩壊ドミノ!豊洲でゼネコンが受注拒否の衝撃 引用元:DIAMOND online 2017.11.17.
希望の党代表を辞任した小池百合子東京都知事。都政に専念して巻き返しを図るとの見方がある。だが、国政進出を目論んでいた間に築地市場の豊洲移転をめぐる問題は解決策を見いだせず、東京五輪の計画さえ危うくする事態に陥っている。(「週刊ダイヤモンド」編集部 岡田悟)
都が発注した9件のうち 落札したのは2件だけ
自ら設立した国政政党「希望の党」の代表を11月14日に電撃辞任した東京都の小池百合子知事は、ようやく尻に火が付いたのかもしれない。
というのも、来年秋に開場させたいとしている豊洲市場の追加工事で、入札不調が相次いでいるために工事が遅れるとして、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催に重大な影響が及ぶ恐れがあるからだ。
真に懸念すべきは工事の“遅れ”どころではない。受注を渋るゼネコンの思惑と警戒心を読み解けば、小池知事が五輪に向けて思い描くシナリオは、すでに“崩壊必至”と言わざるを得ない状況なのだ。
9月から入札が繰り返されながら、入札不調が相次いでいる工事は全部で9件だ。
豊洲市場の5街区(青果棟)、6街区(水産仲卸売場棟)、7街区(水産卸売場棟)の計3街区でそれぞれ、地下水が溜まっている地下ピットにコンクリートを打設する工事、地下ピットの喚気を強化する工事、そして地下水の管理システムの機能を強化する工事の3種、計9件の工事を都が発注した。
このうち落札されたのは11月16日現在、7街区の地下ピット換気強化工事と、5街区のコンクリート打設工事の2件だけ。残りの7工事については、いまだに落札されていない。
政治的にも技術的にもリスク大で 最後まで逃げ回りたいゼネコン
豊洲市場の建設前の土壌汚染対策工事と、建物自体の建築工事は、5街区は鹿島、6街区は清水建設、7街区は大成建設を筆頭とした共同企業体(JV)が施工した。
ただ、昨年夏に就任した小池知事の方針で、豊洲市場地下の地下水や、空気中の汚染物質を減少させるために、追加工事をすることが決定した。
通常、スーパーゼネコンが大型工事を受注、施工すれば、付随する小規模な工事やメンテナンス業務まで含めて請け負うのが慣例だ。前述の追加工事も、わずか数億円程度の規模であり、本体工事を請け負ったゼネコンがそれぞれ“あうんの呼吸”で受注しても何らおかしくはない。
にもかかわらず今回、鹿島が5街区のコンクリート打設工事を受注したのを除けば、清水や大成、そして鹿島は他の工事で、そもそも入札に参加しなかったり、入札途中に辞退したり、予定価格より大幅に低い価格で札を入れるなどしている。
なぜか。「単に予定価格が安すぎるだけ」(ゼネコン業界関係)との声もあるが、ある都OBはゼネコン側の意向をこう“忖度”する。「政治的にも、技術的にもリスクが大きすぎる。ゼネコン側からすれば、とにかく最後まで逃げ回りたいということだろう」。
というのも、もし追加工事をやり遂げても、再び地下水が出てきたり、地下水や空気中から多量の汚染物質が検出されたりする可能性は高い。ゼネコン業界では、豊洲市場の地下構造上、たとえ追加工事をしても、地下水や汚染物質の発生は防ぎきれないという声が、従来からある。
そもそも建物を建てる前に行った、860億円という莫大な費用をかけた土壌汚染対策工事を受注したのも、これらゼネコンJVだった。彼ら自身が追加工事を行ったにもかかわらず汚染物質が減少しなければ、当初の大規模な対策工事は一体何だったのかと、都とともに社会の非難を浴びるのは必至だ。
鹿島が一部の工事を落札したのは、秋葉原の再開発など、清水、大成よりも特に都との関係が深いためとの見方がある。そんな鹿島も、5街区の地下水管理システム強化工事は、2回目の入札を辞退しているほどだ。
工事を発注している都も、従来なら、担当者が落札させたいゼネコンに“相談”を持ち掛けるといった行動を取ることができた。
だが、小池知事は豊洲の過去の工事に疑惑の目を向ける。自身の豊洲開場延期の決断によって「黒い頭のネズミがいっぱい出てきたじゃありませんか」と、談合疑惑をあぶりだした成果を誇って自ら入札改革に乗り出したほどで、“談合まがい”の行動はできない。
とはいえ、このまま事態を放置するわけにもいかず、「都の中央卸売市場が動くとあまりに露骨なので、財務局がゼネコンとの“仲裁”に乗り出した」(前出の都OB)との情報まで漏れ伝わってくる。
豊洲の工事が終わらなければ 築地も解体できずに狂う計画
とにかく、築地から豊洲に中央卸売市場の機能を早期に移さなければ、五輪に向けた都の計画は大きく狂ってしまう。
計画では、豊洲への移転後に、現在使用されている築地市場を解体。ここに五輪開催中、晴海の選手村と、各競技の会場間で選手や関係者を輸送する車両の拠点で、駐車場の役割を果たす「デポ」を設ける予定だ。
デポ設置のためには、現在計画されている18年7月に追加工事の完了→9月に小池知事が事実上の「安全宣言」→10月に豊洲市場が開場、との既定路線が完遂されなければ間に合わない。
しかし、そもそも入札不調によって、豊洲の工事が予定通りに終わる可能性は揺らいでいるし、もし工事ができたとしても、地下水や汚染物質を抑えられるかどうかは、そもそも分からない。
その結果、築地を予定通りに解体できずスケジュールが崩れれば、新たにデポの用地として十数ヘクタールの土地を確保する必要がある。
さらに、選手らの主要な輸送路となる環状2号は、五輪前のトンネル区間の開通を見送り、地上部分のみを使うとしたことで、本来の計画より輸送能力が限られ、選手らのスムーズな輸送に対する懸念はすでにある。ここでも築地市場の解体が遅れれば、地上部分の開通さえ危うくなるのだ。
つまり、豊洲の遅れがまるでドミノ倒しのように、五輪の計画を崩壊させてしまいかねないと言えるのだ。
小池知事は就任直後から、豊洲市場がはらむさまざまな問題に気づき、メスを入れたまではよかった。
ところが、抜本的な解決策を見いだせない中での今年6月、「築地は守る、豊洲は生かす」とのスローガンを打ち出し、事実上の豊洲移転を決めた。
その後は7月の都議選で勝利を収めたものの、9月の希望の党設立と、10月の総選挙での惨敗、そして同党の運営を巡る民進党出身の衆議院議員との対立など、政治的なエネルギーを都政以外で使い果たし、支持率も激減。さらには、都議会で「知事与党」の姿勢を表明していた公明党会派が離脱を表明し、小池知事の政治基盤はますます危うくなっている。
刃折れ矢尽きて、ようやく都知事職に専念する決意を固めたようだが、時すでに遅しかもしれない。 |
(2)「五輪と公文書 組織委の「穴」ふさげ」と題する11月20日つき朝日新聞社説
五輪と公文書 組織委の「穴」をふさげ 引用元:朝日新聞 2017.11.19. 社説
東京五輪・パラリンピックの開催まで1千日を切った。
巨大プロジェクトである五輪には、国、東京都、そして組織委員会と、さまざまな機関がかかわる。将来にわたって国民への説明責任を果たすには、それぞれの活動や意思決定の過程をきちんと記録・保存し、公開する仕組みが欠かせない。
政府の公文書管理委員会は、東京五輪を「国家・社会として記録を共有すべき歴史的に重要な政策」と位置づける考えを打ち出した。省庁が持つ五輪関連の文書はすべて、国立公文書館等に移管されることになる。
都議会もこの夏、公文書管理条例を制定した。前からあった情報公開条例とあわせ、「車の両輪」がそろった形だ。
組織委も同様の問題意識をもち、体制を整える必要がある。
何といっても、五輪運営の中心となるのは組織委だ。競技会場の選定や見直し、輸送計画づくり、コストの削減など、幅広い分野で都や国などと調整し、決定する役割を担っており、公的な性格がきわめて強い。
にもかかわらず、公益財団法人である組織委には、公文書管理や情報公開に関する国や都のルールは及ばない。事業計画書や収支予算書、理事会の議事概要などは公開されている。だが将来の検証に堪えうる範囲と内容かという観点からみると、十分とは言いがたい。
苦い教訓がある。
98年の長野冬季五輪では、招致委が会計帳簿を勝手に処分してしまい、招致にまつわる買収疑惑の解明がはばまれた。
組織委は都が50%を出資し、職員の3割にあたる約250人は都から派遣されている。本来、都条例にもとづき、情報公開の努力義務が課せられる団体にあたるが、特別に免除されている。国際オリンピック委員会(IOC)との関係が深く、他の団体とは同列に扱えないという事情による。
だからといって社会への説明責任を果たさなくてもいいという話には、むろんならない。
大会準備のため、他の機関とどんな協議を交わしたのか。組織委内でいかなる検討をしたのか。自律的に記録の作成・保存を進め、大会を終えて解散する際には、都など適当な機関にすべてを移管することを、今から取り決めておくべきだ。
IOCの「アジェンダ2020」は五輪運営の透明化をうたう。膨大な経費がかかり、開催に厳しい視線が向けられる今、市民の理解を得る努力は不可欠だ。オープンな姿勢で新時代の五輪を世界に発信してほしい。 |
五輪運営の中心の組織委に対し、長野冬季五輪後の会計帳簿の恣意的処分に言及しつつ、自律的に記録の作成・保存を求めている。国際オリンピック委員会(IOC)との関係の深さが指摘されている。
(3)2017/11/14 国連人権理事会の対日人権審査で、福島原発事故被害者の人権問題に懸念 ーー日本政府は勧告の受け入れにつき要望が表明された。
国連人権理事会の対日人権審査で、福島原発事故被害者の人権問題に懸念 ――日本政府は勧告の受け入れを 引用元:GREEMPEACE Japan Mobile Site 2017.11.14.
国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都新宿区、以下グリーンピース)は、スイス・ジュネーブで本日14日午前(現地時間)に行われた国連人権理事会による日本の普遍的定期的審査(UPR)(注1)の作業部会で、東京電力福島第一原発事故をめぐる日本政府の対応に複数の国の政府代表者が人権侵害の是正勧告を行ったことを受けて、日本政府がこれらの勧告を受け入れることを求めます。
ドイツ、オーストリア、ポルトガル、メキシコは、特に健康への取り組みと、女性と子どもの人権侵害是正を正式に勧告しました。国連人権高等弁務官事務所条約機関と国連特別報告者も、UPRの実施に伴い提出した文書の中で、これらの勧告と同様の懸念を示しています(注2)。
グリーンピース・ジャパンのシニア・グローバル・エネルギー担当のケンドラ・ウルリッチは「ドイツとベルギーは、原発事故の被害を受けた女性と子どもの権利の保護について、日本政府に対して厳しい質問をしましたが、 日本政府はきちんと答えませんでした。日本政府は、自らが署名している国際的な人権条約を守らず、福島の女性と子どもたちを犠牲にしています。女性と子どもは、社会的、経済的な弱者であるだけでなく、放射線の影響を受けやすく、日本政府は、今すぐに、被害者とりわけ女性と子どもの人権侵害の状況を是正すべきです」と訴えました。
福島原発事故によって、国際的な公衆被ばく限度である年間1ミリシーベルトを上回る量の放射能に汚染された地域への帰還は、多くの人権問題を伴います。日本政府は、2017年春にいわゆる「自主避難者」への住宅支援を打ち切り、2018年3月には、避難指示が解除された地域の賠償も打ち切ります。これにより被害者は、経済的な理由によって、汚染された地域に自らの意思に反して戻らざるを得なくなる可能性もあります。このような方針は、日本が締結している複数の人権に関する条約に違反しています。
ポルトガル、オーストリア、ドイツ、メキシコは、日本政府に対して、原発事故被害者への経済面、健康面そのほかの支援の継続を正式に勧告しました。ドイツは、年1ミリシーベルト基準を帰還政策で採用するよう求めました。これは2012年に来日した健康の権利特別報告者の報告にも沿っています。(注3)
国際民主法律家協会(International Democratic Lawyers)代表で、国連人権理事会担当の弁護士ミコル・サヴィア氏は「国際社会は日本政府に対し、原発事故被害者の人権、特に女性や子どもの権利侵害に対処するよう要請しています。 私たちは、日本政府が勧告を受け入れ、その帰還政策を改めるよう強く求めます。被害者は、住宅支援や賠償の打ち切りによって、汚染地に帰るか、貧困に直面するかという選択を迫られています。これは国際的に見ても人権侵害にほかなりません」と語りました。
グリーンピース・ジャパンは、先月、福島原発事故被害者の女性とともにUPRの事前セッションに参加しています。(注4)
注1)国連人権理事会の創設に伴い、国連加盟国(193カ国)全ての国の人権状況を普遍的に審査する枠組みとして盛り込まれた制度。今年は、日本についての審査が行われる。10月の事前セッションのあと、11月の作業部会で国連加盟国すべてが議論に参加、審査結果としての結果文書は3月の人権理事会本会合で採択される。結果文書は、勧告及び(または)結論と被審査国の自発的誓約から構成される。 外務省:http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken_r/upr_gai.html
注2)Report of the Office of the United Nations High Commissioner for Human Rights - Compilation on Japan
注3)Report of the Special Rapporteur on the right of everyone to the enjoyment of the highest attainable standard of physical and mental health、 Anand Grover
注4)グリーンピース、本日クラウドファンディング開始ー ー「福島原発事故をめぐる政府の帰還政策は人権侵害」 国連勧告を目指して、被害者をジュネーブへ(プレスリリース) |
福島事故処理が東京五輪のために、後回しにされてにされていることに対して内外から批判が高まっております。
村田光平
(元駐スイス大使)