残念なピアノの話
1976(昭和51)年の酒田大火の火元は、市の中心部である柳小路にあった「グリーンハウス」という、洒落た映画館でした。その映画館を作ったのが佐藤久一ですが、彼はその後レストラン経営に乗り出し、「けやき」や「ル・ポットフー」というフランス料理店を作りました。映画好き、料理好きということもあるのでしょうが、もともと文化を尊ぶ酒田人気質が背中を押したのでしょう。 佐藤は大火を、駅前にあった「東急イン」のル・ポットフーの窓から見守ったといいます。
そんなル・ポットフーは、今でも酒田人に人気があり、忘年会やパーティにもひっぱりだこです。 先日は、酒田混声合唱団のクリスマスコンサート&パーティもこのル・ポットフーで開かれました。私たち男声合唱団・酒田メンネルコールも招待という形で参加したのですが、一つだけ残念なことがありました。それがピアノです。 学校の倉庫などにぽつんと置き去りにされているピアノを想像してみてください。たまたま見つけた子どもがポロンポロンと弾いてみると、子どもにもわかるひどい音です。調律が狂ってしまっているのです。そんなピアノを「ホンキートンキー」なんて言ったりしますよね。昔のウェスタン映画に出てくる西部の町の酒場のピアノもそんな音ですね。調律できる人がいないからです。 ル・ポットフーの5階広間のアップライトピアノが、まさにこのホンキートンクでした。私たちがほろ酔いながらもきちんとハーモニーを作ろうとがんばっているのに、ピアノだけが素っ頓狂な狂った音を奏でるのです。 帰りがけに、顔見知りの支配人に「ピアノが残念でしたね」と言ったら、急に顔色を変えて(ということは、いろんな人が同じ苦情を言うのでしょうか)、「ピアノはお客様のほうで調律していただくことになります」と言うのです。バカ言っちゃいけない、これほど狂ってるなんて事前にわかるもんか。それにちょっとしたパーティをするのに、数万円もかかる調律費を自前で出せるわけないだろう。 ピアノが置かれたホールを貸すのだから、せめて1年に一度くらい調律しておくのがホール側の心意気ってものじゃsないだろうか。ピアノの使用料は別料金でとっているはずなのだから。 それにしても、みみっちい酒田人のいやな面を見せられたようで、気分がよくない。佐藤久一が聞いたらどう言うだろうか? その後、知り合いのピアニストにぼやいたら「あそこのピアノは有名よ」と言われました。
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