カラスのホバリング
夕方の犬の散歩のため、砂丘の松林に車で向かう途中、坂の登り口の交差点に顔見知りのカラスがいた。このカラスは春になるとカップルでここにもどってくる。同じカラスなら、ぼくたちが移住してきた9年前にはここにいたのだ。ある時は高くのびたアカシアの梢に、あるときは電線に仲良く並んでとまっている。またある時は車道に降りてなにかを拾っていることもあり、なぜか横断歩道をそそくさと歩いて渡っていることもある。 坂を登ると県立の高校があり、登下校の生徒が行き交うのだが、少しも気にする様子もない。 ここ2~3日いるにはいるのだが、一羽だけしか見かけない。もう一羽は巣篭もりを始めたのだろうか。人間なら「おめでとう」と言うべきか? さて、夕方見たカラスはなぜか空中にとまっていた。え、空中に? そう、彼(たぶん)は何と空中でホバリングしていたのだ。信号機の高さより少し高いくらいか。そして、口から何かを落とし、それを追いかけるように地上に舞いおりた。 何かとはもちろん、クルミだった。だが、この高さでは割れるはずもなく、すぐに回収したようだった。危ないなあ、車や人の頭に落ちたら、けっこうな衝撃だぞ。 その後カラスはどうした? ぼくたちは車で通り過ぎたので、その後はわからない。 去年はこのあたりのカラスにクルミ割りが流行った。この先の市営公園の駐車場では、高いところから投げ落として見事に割るカラスがいたし、それを真似て落としたものの高さが足りずに失敗ばかりし、それを偶然車が轢いて割ってくれたので、車をあてにして路上に置くことにしたカラスもいた。ただし、このカラスはどこに置くべきかの判断がまずくて、成功例は少ないようだったけれど。 ここから離れたわが家の前でも、投げ落として割るカラスが現れた。去年はクルミを割ることがこのあたりのカラスの流行だったようなのだ。
ところが今年はまだカラスのくるみ割りを見ないなあと思っていた矢先だったのだ。 カラスはどういうわけか、自分の飛行技術に自信があるらしく、スリリングな飛行をあれこれやってみせるのだが、このホバリングも、なかなか自信たっぷりのようだった。そして落ちるクルミを追いかけて地上スレスレに舞い降りる様子も。 ははん、パートナーがいれば止めるのかもしれないな。今、彼はパートナーに食べ物を運ぶ間の自由な時間に、ちょっとした冒険を楽しんでいるのかもしれない。
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