目の前を蝶が横切りました。白地に黒い縞が見えた気がして、目で追跡します。ギフチョウ?まさか、もうギフチョウの季節ではないし、この森にギフチョウがいるわけがない。白いアゲハ?白いキアゲハ?
細いコナラの幹にとまりました。ゴマダラチョウのようです。撮影しながら近寄ります。とまったところは樹液がしみ出している、いわば昆虫の酒場のようなところでした。スズメバチがやってきて蝶に襲いかかろうとしましたが、するりとうまくかわしてまた戻ってきました。
ぼくにとってゴマダラチョウとの出会いは二度目です。
最初は横浜でした。住んでいた団地に勝手にはえてきたエノキの若木に、小さなイモムシがいたのです。茶色で頭に2本の角があります。これ、オオムラサキの幼虫?図鑑やテレビで見たオオムラサキの幼虫に似ています。これを飼えば、国蝶といわれるオオムラサキが羽化するのではないか?そう思って家に連れ帰りました。時々エノキの葉を取り替えているうちに、サナギになりました。羽化するのは来年かな?と思っていたのに、間もなく羽化してしまいました。期待していたオオムラサキではなくて、小さくて白地に黒いすじのある蝶です。図鑑によればゴマダラチョウでした。
今日見たゴマダラは、この時よりも大きく、薄墨で描いたような淡い色合いです。一度目に見たのは夏型、今日出会ったのは春型なのだそうです。一度目はオオムラサキでなくてがっかりしたけれど、こんなに美しい蝶だったのかと改めて思いました。夏型と春型の違いもあるのでしょうが、美を感じるセンサーも年齢とともに変わるのかもしれませんね。
名前が似ている、いや姿も似ているオオゴマダラという蝶が沖縄にいます。10年前に沖縄を旅行したとき、摩文仁の丘に蝶を育てているところがあり、オオゴマダラが飼われていました。サナギが黄金色でびっくりしたのですが、このオオゴマダラは、毒蝶のカバマダラや旅する蝶アサギマダラに近い種類です。一方、ゴマダラチョウは、オオムラサキやコムラサキの仲間です。関心のない人にはどうでもいい話でしょうけれど。