核燃料サイクからの撤退
昨年9月超党派の議員と市民団体がワシントンを訪問し、日本のプルトニウム廃棄と六カ所で建設中の再処理工場を停止させることを訴え、協定の改定時に米議会・政府で議論することを要請する各方面への ロビーイングを行った旨一昨日ご報告いたしましたが、本2日付の東京新聞の一面トップに、元米国務次官補のトーマス・カントリーマン氏が「日本の大量プルトニウムを懸念して核燃サイクル撤退を求める」と発言した旨の記事が掲載されました。 こうした動きは未だに440余基の原発を容認し推進する世界の主流の「思考停止」に衝撃を与えるものと思われます。 既に、フランス政府はスーパーフェニックスに替わるアストリッドから撤退の構えとも伝えられ、英国政府も日立による原発建設への資金協力に慎重になりつつあると伝えられております。福島事故後、「原子力の全方位の破壊力」についての理解は当然のことながら深まりつつあることは否定できません。 プルトニウムの抽出を認める日米原子力協定は今年7月16日で30年の期限を迎え、自動延長が決まっておりますが、延長後は、日米いずれかが通知すれば破棄できることになっております。13兆円近い費用を投じて進めてきた核燃料サイクルの大義名分はないと断ずるのが常識、良識であリ、「市民の直観」です。 日本は核爆弾5000発以上製造できる約47トンのプルトニウムを国内外に保有しておりますが、、カントリーマン元米国務次官補はこれが国際安全保障上の懸念となっており、特に北朝鮮に核兵器を所有する口実を与える心配があると指摘しております。同次官補によれば、現トランプ政権も同様の懸念を共有しているとのことです。 日本の核武装の可能性については小泉元総理は実験場所がないことを理由に否定しております。核武装の動きが現実に表面化すれば外国がこれを阻止する動きにでることは確実であること、核武装は原発を保有する口実に使われているなどの見解が注目されます。 いよいよ日本の原子力政策の基本が内外で問われだすものと思われます。 村田光平 (元駐スイス大使)
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