防災行政無線
去年のことだ。ある日、いつものように夕方の散歩に行くと、「万里の松原」と呼ばれている森に隣接した廃校の裏庭をカーキ色が埋めていた。何事かと近づいて見下ろすと、自衛隊らしい車両や人員が集まっているのだ。もっと近寄ってみたかったのだが、言葉にできない恐怖感に襲われその場を離れたのだった。 その2~3日後に、ミサイルを想定した避難訓練が実施されることになっていて、そのための配置かと思ったのだが、報道される限り訓練に自衛隊が動員されていた様子はなかった。
さてその訓練だが、それに関わるらしい「防災行政無線」の音声が当日繰り返し聞こえていた。しかし設置場所が遠いせいもあり、ほとんど聞き取れない。散歩中なども時々聞こえてくるのだが、内容が聞き取れたことは一度もない。 震災の時、大津波が迫る庁舎に最後まで残って放送を続けたあの防災無線。あれを思い出させるゆっくりとした音声が、こだまとともに虚しく響いている。 今回の西日本の豪雨災害でも、この防災無線は活用されたのだろう。しかし、どれほどの実効性があるのだろうか。真冬、あるいは真夏、窓を締め切っていれば放送されていることにも気がつかない。テレビを見ていても同様だ。 ダムが満水による決壊を防ごうとしてやむを得ず放水したため、下流で甚大な被害が出た例があった。事前の連絡がなかったと主張する被害者。「いや、連絡はした。」と弁明する行政側。きっと連絡はしたのだと思う。だが、それが住民に届いたのかどうかが問題だ。連絡はあったが動かなかったという例が、今回の災害で浮き彫りになったが、それはそれとして、行政からの緊急連絡の方法は再検討すべきだと思う。
同時に「詳しくはウェブで」というあの決まり文句はどうなのか。パソコンもスマホも使えない、使わないという人が、高齢者を中心にいることを忘れてはいけない。「連絡はしました」というのが、責任を回避するためだけの、実効をともなわないものであってはきえないのだと思う。
それにつけても、ディズニーランドのあの放送設備はどういう仕組なのだろうか。たとえばパレードで流れる音楽は、複数のスピーカーから聞こえているのにタイムラグがなく、はっきりと聞こえるのだ。あれが防災行政無線に応用できるのなら、少しは役に立つものになるのかもしれないが。
|