ここのところ物議を醸し出している杉田水脈議員の「LGBTは『生産性』がないので支援する必要はない」論文や小川栄太郎氏のLGBTと痴漢をごちゃ混ぜした擁護論などは論ずるに値しませんが、深刻な問題はそれらの論考を掲載した『新潮45』です。
昨日、新潮社は『新潮45』の休刊を宣言しましたが、赤字事業でもあり面倒な議論に巻き込まれるより、さっさと逃げた方が得策と臭い物に蓋をしたという感じです。
はたして言論を担う老舗出版社としてこれでいいのでしょうか。過ちは過ちとして認めそこから幅広い議論を展開する場を提供するのが出版社の役目だと思います。
何時までもこんな醜態をさらしていると出版界の衰退は益々進んでいくでしょう。
江川紹子の「事件ウオッチ」第112回 「新潮45」LGBT差別…江川紹子が指摘、休刊だけですまされない問題の本質 引用元:2018.09.25. Business Journal
出版社としての良心と見識は
雑誌業界は、どこも部数減に苦しんでいる。そういう中で、「WiLL」や「月刊Hanada」などの極右系雑誌は、最近は大新聞に広告を出すなど好調に見える。若杉編集部は、ウィングをさらに右に広げ、両誌の執筆者を取り込むと同時に、こうした雑誌の論調を好む層に食い込みたいと考えたのだろう。
杉田氏の問題原稿が掲載された8月号に、作家の適菜収氏が連載「だからあれほど言ったのに」最終回で、この現象を示唆するような文章を書いている。
<5年くらい前に自称保守を対象として月刊誌の編集者から直接聞いた話ですが、毎回執筆者とネタ(朝日新聞、野党、中国、韓国、北朝鮮、日教組はけしからんといった話)が同じなのは、主な読者層が中高年だからだと。彼らは新しい情報や視点を求めているのではなく、自分が信じているものが正しいのだと誰かに保証してもらいたいのだと。書店のPOSシステムを見ると、いわゆるネトウヨ本を買っているのもこの層だ。定年後、時間をもてあまし、政治に目覚めてしまう。小金も持っている。でもリテラシーがないから、ゴミ情報に簡単に騙される。出版不況が続く中、モラルを失った編集者がこの層に向けて自慰史観のコンテンツを作る。これは政治がマーケティングの手法により劣化したのと同じ構造だ>
このようにして「新潮45」編集部も劣化していったのだろう。
しかし、「WiLL」や「月刊Hanada」などのヘイト表現も辞さない“刺激的”な表現に慣れた層にとっては、「新潮45」はまだ生ぬるかったのかもしれない。若杉編集長になっても部数減は止まらず、同氏就任時の2万567部が、直近では1万6800部にまで落ち込んだ。
こうした状況を打開するために、10月号で初めて、安倍首相礼賛と朝日新聞叩きで知られる毒舌家の小川氏を起用し、杉田擁護と合わせて「『野党』百害」も特集し、10人の書き手に野党政治家の悪口を書かせるなど、これまで以上に極右層に受けそうなコンテンツを並べたのではないか。 |