フランスのマクロン大統領が第1次世界大戦終結100年の記念式典で「歴史は繰り返す時がある。
愛国主義はナショナリズムとは正反対の位置にあるものだ」と各国首脳に共通認識を呼びかけました。これは最近の中南米や欧州に見られるポピュリズムの台頭やトランプ大統領を念頭に入れた発言でしょう。
そこで、ふっと気が付いたのが、「愛国主義」と「ナショナリズム」。今の日本ではこの二つの概念が混同されて使われている。というより現政権が意図的にごちゃ混ぜにしているのではないかということです。
「愛国 パトリオティズム」は、個人が生まれ育った国や郷土に対する個人的な思い入れであるのに対し、「ナショナリズム」は、国家や民族を主体として他国家・他民族の排他・差別につながる性質を持ったものです。戦前のナチスドイツや大日本帝国がこれです。
安倍首相が言う「美しい日本」など、このごちゃ混ぜ手法の最たるものでしょう。個人の情緒に訴えながら、その実、地域における覇権を狙っている。
英国の作家ジュリアン・バーンズのことばに
「最高の愛国心とは、あなたの国が反名誉で悪辣で馬鹿みたいなことをしている時に、それを言ってやることだ」とあります。
今こそ声を上げる時なのかな。
マクロン氏「悪魔が再び」 ナショナリズムに懸念 引用元:日本経済新聞 2018.11.12.
【パリ=白石透冴】第1次世界大戦終結100年の11日午前、フランスのマクロン大統領は記念式典で「古い悪魔が再度目覚めつつある」と述べた。世界で高まるナショナリズムの兆候に強い懸念を示したものだ。ドイツのメルケル首相や国連のグテレス事務総長も同日、世界は多国間主義に立ち返るべきだと呼びかけ、孤立主義に逆戻りしかけている世界に警鐘を鳴らした。
式典はマクロン氏が呼びかけ、パリ中心部の凱旋門で開かれた。中間選挙を終え初の外遊となるトランプ米大統領、ロシアのプーチン大統領、日本の麻生太郎副総理兼財務相など各国の首脳級70人以上が参加した。
マクロン氏は第1次大戦の悲惨な被害に触れた後、「大戦後に誰もが平和を誓ったが、ナショナリズムや全体主義の高まりが2度目の大戦を生んでしまった」などと振り返った。「歴史は繰り返す時がある。愛国主義はナショナリズムとは正反対の位置にあるものだ」とし、欧州など一部でナショナリズムが高まる兆候があることに危機感の共有を呼びかけた。
各国首脳は11日午後、引き続き開かれた「パリ平和フォーラム」にも参加した。メルケル氏は「国際的な協力が疑問視されるようになり、国家主義的な視野の狭い考え方が再び広がっている」と危機感を表明した。グテレス氏は「貧困や不平等を解決するのは、全ての人を巻き込んだ多国間主義だ」と応じた。
今回の記念式典やフォーラムはトランプ米政権が自国第一主義を主張し、米欧の結束が揺らぐなかで実施された。マクロン氏とメルケル氏は10日、第1次大戦で休戦協定を結んだ仏北部コンピエーニュの森で会合し、和解と欧州の統合強化を確認した。
ただトランプ氏が「欧州軍」構想を唱えたマクロン氏を「非常に侮辱的だ」と9日に批判するなど、米欧のきしみは隠せない。各国首脳が並んで式典会場となった凱旋門まで歩いた列にも加わらず、平和フォーラムにも欠席した。
トランプ氏とプーチン氏との首脳会談も注目されたが、ごく短時間の接触にとどまった。米国による中距離核戦力(INF)廃棄条約の破棄表明などで関係がぎくしゃくする両首脳の協議は、11月末にブエノスアイレスで開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議に持ち越された。
第1次世界大戦は1918年に終戦となったが、ドイツへの重い戦後賠償や米国の孤立主義への傾斜などを背景に、世界は再び世界大戦への道を歩んだ。現在のナショナリズムの広がりや米国第一主義が、当時の状況と重なると懸念する声が広がっている。 |