木を植えた男・考 その1
フランスの作家ジャン・ジオノ(1895/3/30~ 1970/10/8)さんが、 『リーダーズ・ダイジェスト』という会社からの 「あなたが今まで会った中で最も忘れがたい人物は誰か」というアンケートへの回答としてこの作品を出しました。 1953年のことです。ジオノさん58歳の時の著述です。彼は75歳の生涯です。 1953年というとおりしも私が生まれた年です。妙に親近感を覚えています。 さて出版社に送ったのですが、編集部はその人物が実在しないことを確認して 掲載しなかったといういわくがあります。 私は最初作品を読んだときノンフィクションかと思っていましたが 実は壮大なフィクションでした。でも私にとっては快いウソです。 何度も読み返して作品世界を味わっていますが、 読後爽やかなすがすがしい思いにさせてくれます。 来年1月の朗読会で読むのでそれに向けての読み取りの日々です。 主人公のエルゼアール・ブフィエ氏については年齢が示されていますが、 彼に出会ったもう一人の主人公の「私」は何歳なのか示されていません。 ジオノさんは敢えて書き示さなかったのかもしれませんね。 けれども私にとっては作中の「私は何歳?」だったのだろうかと気になります。
作中には『…そのころ私も十代半ばでありながら…』とありますが、 その少し前にたばこを喫煙している場面がありますので、 「十代半ば」ではありませんが暫定18歳ということにして読み込んでいます。
二人が出会ってからの33年間の年月の重さが森林の育成ぶりに反映されている作品です。 そこでブフィエ氏と「私」を時系列でメモって読み取りの試みをしています。 1858年ブフィエ氏 生誕0歳 1910年ブフィエ氏 52歳 どんぐりを植え始める 1913年ブフィエ氏 55歳 私(暫定18歳) ※二人が出会う 1914年 第一次世界大戦勃発 56歳 19歳 1919年 戦争終結 61歳 24歳 1920年再びブフィエ氏を訪ね、以後毎年訪問 62歳25歳 1933年森林監視員視察 75歳 38歳 1935年政府の派遣団視察 77歳 40歳 1939年 第2次世界大戦勃発 81歳 44歳 1945年 私がブフィエ氏に最後にあった 87歳 50歳 1947年ブフィエ氏死去 89歳 52歳
木を植えた男という作品中には会話が極めて少ないのです。 年齢を想定しないことには会話に立体感が出せません。 そこでこのメモを取ってみたという次第です。
|