今年九十三になる母と駅ビルの蕎麦屋に入ってのこと。丁度昼どきとあって店内はほぼ満席。注文を済ませ、周りを見渡すと。隣にいる７０代後半ぐらいの男性客がしきりにハエを払う素振りをしているのです。すでに運ばれた料理に手を付けビール小ジョッキを半分ほど飲んでいるのですが、よっぽど気になっているのでしょう。
そこへ３０前後と思われるウェートレスが、すうっと近寄り右手でサッと、そのハエをワシ掴みにし、その男性客に微笑みながら会釈して厨房へと立ち去りました。その見事な立ち振る舞い、まるで宮本武蔵が箸でハエを掴んだとの逸話を再現したかのような光景でした。そして呆気にとられた男性客の顔。
いくらこの寒さで弱ったハエとはいえ
「お主、只者ではないな！」という出来事でした。