ごりらパパさんの自転車教室
ごりらパパさんの自転車教室
物置小屋をがさごそがさごそ ごりらパパさんは朝早くから大掃除 「どこやっちゃったかなぁ・・・。確かここに・・・」 あっちの荷物をこっちにやって、こっちの荷物をあっちに動かして いったい何を探し物しているのでしょう。 「おや、このカバーをかけてあるものは何だったかな?」 パパさんはそれをずるずると物置小屋の外に引っ張り出しました。 埃をぷっぷっぷーのパタパタパタとやってカバーをはずしました。 「おんやまぁ、こりゃ懐かしい。」 肝心の自分の探し物をやめて、あちこち撫でまわしました。 「パパなにやってんの?」 「うん、パパが子どもの時に乗っていた自転車だ。」 「ちょっと、おんぼろっぽくない?」 「大丈夫だ。どこも壊れていない。ちょっとあちこち色が剥げているが 錆を落として油をさして ペンキを塗りなおせば・・・OK!」 次の日の朝早くから大張り切りのごりらパパさん。 「じゃ~~ん。かんせ~い。大成功。よくガンバリました。」 パパさんは自分で自分を褒めました。 「ぱぱぁ。ママがおひるごはんだってさ。・・・なにやってんの?」 「やあ、ごりちゃん。見てごらん。昨日の自転車。」 「わー。ぴかぴか」 「そうさ、ぴかぴかのしんぴんのぴんだ。名付けて『ピカシンⅡ世号』だ。 パパからごりちゃんへのプレゼントだ。」 「・・・」 「おやぁ、なんだかあんまり嬉しそうじゃないね。」 「だって、ぼく、じてんしゃきらいだもん・・・」 「どうして嫌い?」 「だってぼく、じてんしゃ うんてんできないんだもん」 「大丈夫さ、パパが上手に運転できるように教えてあげるさ。 上手に乗れるようになったら楽しいぞ。なんてったて 自分の好きなところに何処へだって行けちゃうんだぞ。」 お昼ご飯を食べ終わるとごりらパパさんはごりちゃんを肩車して 鼻歌を歌いながらピカシンⅡ世号のところに来ました。 自転車はぴかぴかのしんぴんのぴんでごりちゃんを待っていました。 「さあ、練習れんしゅう・・・おや、どうしたんだい?」 「だって、ぼく、じてんしゃこわいんだもん・・・」 「どうしてこわい?」 「だってぼく、ころぶといたいからこわいんだもん・・・」 「大丈夫さ、だれでも最初は転ぶことだってあるさ。 転びながら上手になるんだ。」 「でもいたいから、やだ」 「大丈夫、上手に転べばいいのさ。」 「じょうずにころぶとどうなるの?」 「上手に転ぶとちょっとだけ痛い。」 「じょうずでなくころぶとどうなるの?」 「上手でなく転ぶと『へたっぴー』になる。」 「じゃあ、『もっとへたっぴー』にころぶとどうなるの?」 「そうすると『へたっぴーのぴぃー』になる。」 「じゃあさぁ『もっとへたっぴーのぴぃ―』にころぶとどうなる?」 「そうだなぁ『へたへたぴっぴのぴっぴりぴっぴぴー』になるな。」 「・・・じゃあさ『もっともぉーっともぉーっと…』なったら・・・」 「牧場の牛がみんなして『も~~~ぉ』と啼いて へたへたぴっぴのぴっぴりぴっぴぴーがカミナリさんと二人で 空から落っこちてきて 『おおいててて』ってお尻をさすって、 お山のカラスが『カー』っと鳴いて お池で蛙が『ケロケロ』って騒いで、 もう、町中がシッチャカメッチャカになるだろうな」 ごりちゃんは顔をしかめてお尻をさする真似をしながら 「あはははは」って笑いました。
「さあ、練習れんしゅう」 だいじょうぶっかなぁ」 「ブレーキに手をかけてハンドルを軽~く持って、 ペダルを…おっとそうか。やり方替えよう。 ごりちゃんこっちの道の少しだけ下り坂で練習だ。 ペダルはまだ漕がなくて大丈夫。」
よろよろもたもた、よろよろおっとっと。 ちょっとスピードが出てくるとごりちゃんはブレーキを ききーっと握りました。 ごりらパパさんは坂道が終わると、 もう一度スタート地点まで自転車と ごりちゃんを押して戻りました。 ごりちゃんはどんどん上手になってきました。 そして10回目の運転の時には何とごりちゃん得意のでたらめ歌で ♬よーろよろ もーたもた、よろよろおっとっと よーろよろ もーたもた、よろよろおっとっと じーてんしゃ じーてんしゃ よろよろおっとっと あっちいって こっちいって よろよろおっとっと ♪ と鼻歌を歌いながら自転車を運転しました。 「ごりちゃん。楽しいかい?」 「うん。たのしーい。ぼく、じてんしゃ、だいすきだ。」 「あっとっと。」 すってーん。 「おっ。ごりちゃん、今の転び方、ぴんぽ~ん。大成功。」 「ちっともいたくなかった。」
よろよろもたもた、よろよろおっとっと すって~ん。 「よっ、転び名人!また明日も練習しよう。」 「パパァ、いまのいたかったぁ」 「そうかぁ。痛かったら泣いてもいいぞ。 『痛いの痛いの、夕焼雲までとんでけぇ~』っと」 「とんでけ~」 ~お・し・まい~
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