きみ、なまってるね?
先日、中学生の投書を読んでニヤリとにやりとしてしまった。ほろ苦い笑いである。英語の先生から「can’t」の発音がなまっていると言われたというのだ。その生徒の父親はオーストラリア人なのだが「イギリスのなまりに似ている」と指摘されたというのだ。先生にとっては、アメリカ英語こそ正しい英語なのだろうが。 たとえば外国の学校の日本語クラスで、日本人の生徒が現地の先生から「きみの日本語はなまるね」と言われた場合を想像すると笑える。その日本人が東北出身だったら、もっと笑えるけれど、かなり苦い笑いになる。 英語は文字通りイギリスの言葉で、アメリカの英語はイギリスからの移民によるもの。イギリス人は王族や貴族がしゃべるキングス・イングリッシュが正当な英語だと思っているだろう。オーストラリアはコックニーといわれるロンドンの下町言葉が伝わったと言われる。「今日はいい日だね。=It is good day today.」をオースタラリア人が言うと、「今日は死ぬのによい日だ」と聞こえるそうだ。Dayの発音がダイとなるからだ。 ぼくたちの高校の英語教師は、アメリカ風英語を徹底して嫌っていた。「持っていない」はI don’t have.ではなくてI haven’t.であり、can’tの発音は「カント」でなくてはならなかった。アメリカ英語は「百姓英語」と馬鹿にした。失礼な。 東京で育った在日東北人のぼくにとって、なまりや方言は微妙な問題だ。東京の人が東北の方言やなまりをジョークにするのはあぶない。差別と捉えられかねないからだ。東北にルーツを持ち、今は東北で暮らすぼくはジョークにすることもあるが、気を使う問題でもある。 話を戻すと、その先生もアメリカ英語こそ正しい英語と思うのは勝手だけど、それをネイティブに対して言うのはかなり失礼だなあ。 思い出したけど、イギリスの映画やドラマに描かれる典型的アメリカ人というのは、やたらに下品な言葉を大声で口走りホラ吹きで、マナーを知らない田舎者だったりする。いくらなんでもそんなアメリカ人は実在しないだろうと思ったら、トランプ大統領がそのままピッタリだったのには驚いた。 もう一つ思い出した。アルゼンチンの子どもを担任したとき、彼女はイタリア語もフランス語もポルトガル語も理解できると言った。ホラ吹きな子でイマイチ信用できないところもあるのだが、同じラテン系の言葉だからそうなのかもしれない。「ずいぶんなまってるけどね。」だそうだ。そして、兄の友人のペルー人の言葉には「へんななまりがある」と言った。 一方、コロンビア人の子は、「コロンビアはコロンブスがアメリカ大陸に上陸した唯一の土地で、コロンビアのスペイン語はスペイン本国と同じなまりのない言葉」と胸を張った。 こういった、民族やお異国心のからみかねない話題には、外国人は深入りしないほうがよさそうだ。
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