学校に子どもがスマホを持ち込んだら……
児童・生徒によるスマホの校内持ち込みを認めるべきかという問題について考えたことです。 実はいわゆるガラケーの時代からこの問題はありました。震災などの災害時に保護者がすぐに連絡がとれるようにということが大きな理由で、それには説得力があります。でもそれに伴って起こるであろうトラブルを考えると、なかなか賛成もできないというジレンマがあって、むずかしい問題です。 東日本大震災のときは大規模な通信マヒが起き、私たちも首都圏の息子、娘と連絡がとれず離れた公衆電話から電話をかけたものです。ケータイは万能ではなく、連絡が途絶えることがありえます。 次に、スマホはだれもが持っているわけではないということ。祖父母はもちろん、若い親が必ずスマホ派とは限らないでしょう。また家庭の方針として子どもにケータイはもたせたくないという保護者もいるはずです。いつ起こるかわからない災害のために子どもの教育を壊されたくない保護者はどうすればよいのでしょうか。
そもそも、学校現場ではすでに子どもがこっそり、または堂々とケータイを持ち込んでいて、それによりさまざまなトラブルが起こっています。 教員など大人は、コンピュータもガラケーもスマホも、顕微鏡がなければ読めないほど小さな文字のトリセツを読みこなせず、十分には使いこなせないのに対して、子どもたちはおもちゃのように遊びながら数多くの「機能」を発見し、それをまた友だちに教え合い、大人の知らない楽しいワザを身につけてしまいます。 たとえば、授業中使っていないテレビのスイッチが勝手に入ってしまうという「事件」が頻発し、実は生徒が机の中に隠したケータイを使って操作していたということがあったり。 成績などを入力するコンピュータはネットから切り離さなければいけないということさえ、私を含め多くの教員が知らず、校内のすべてのコンピュータがオンラインになっていたころ、生徒が学校のホームページにいたずらメールを送りつけてきてヒヤリとしたこともあります。授業で使った技術室のパソコンで、自分のケータイにメールを送るという手法で学校のアドレスを手に入れたのです。 「学校間抗争」と呼ばれる不良同士の喧嘩などは、子どもの様子が変だぞなどという予兆を見つけて事前に防いでいたのに、ケータイ時代になると、連絡をメールやラインでとり合うため発見しにくくなりました。 いわゆるいじめも、「あいつを外そうぜ」などというやり取りもケータイが使われてみえにくくなったばかりでなく、ケータイを道具に使うケースが増えています。たとえば特定の子の「恥ずかしい」画像を撮って(いわゆる写メ)拡散するなどです。いじめが個人的な、あるいは小グループ内のトラブルではなく、拡散という不特定な「世間」に晒すことで、被害者のダメージを拡大してしまうのです。 学校の実態があまり知られていないのは、「個人情報保護」によって、具体的な話が外に出せないということが大きいのです。「こんなことがあったよ」といえば、被害者はだれか、加害者はだれかが特定されてしまうからです。 また、子どもたちに蔓延するゲームやケータイの影響もあると思われる「コミュニケーション障害」によって、トラブルをかわしたり、立ち向かったり、乗り越えたりする力を失っていることも大きい。 災害時の安全のためにスマホを持たせるということが招くマイナスの部分は、決して過小評価してよい問題ではないと強く思います。
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