朝夕の散歩の時に車を停める、森の入口になっている駐車場を縄張りにしているハシボソガラスのカップルが、くるみ割りを始めました。今年になって初めての観察です。毎年同じカラスなのだとすれば、なぜか去年はくるみ割りをしなかったのです。でもその前の年は、別のカラスにも伝播して、ちょっと離れた我が家の近くでも、電柱の上からクルミを落として割るカラスまで現れたのでした。
春になると、この森をねぐらにしているカラスの混成集団から成鳥のカップルが抜けます。残ったのはいわば未成年のカラスで、彼らはギャング団を作り、おそらくハシボソのギャング団は昼間、田や畑などの平地に行きます。森のカラスであるハシブトのギャング団は主に森で活動するようです。まず、林床や道端の枯れ葉や腐葉土をひっくり返して食べられるものを探します。彼らがひっくり返した後は、点々と腐葉土に穴が開いていたり、丁寧にたがやされたようになっています。
このとき、朽木や石、クルミの実などはそのまま放置しておくのですが、路上のクルミは車が轢いて潰してしまうことがあります。これをシジュウカラやヤマガラが見つけて食べます。それに気がついたカラスが、クルミが食べられることを発見するわけです。
しかし、なぜかハシブトは、クルミを割ることにあまり興味がないようです。発見するのは、繁殖のため巣を構えて手近なところで食べ物を探しているハシボソのカップルなのでしょう。
その成年カラスが、積極的にクルミを探してきて、なんとか割ってみようと試みる。あるものはカラスの本能に従って高いところから落として割ろうとします。高さが十分で、地面が舗装されているなどで硬ければ成功するのですが、そうでない場合はどうするでしょうか。冒頭の駐車場のカラスは今まではうまく割っていました。一昨年の例ですが、近くにある交通の激しい交差点にいるカラスがまねしてみたのですが、高さが足りずうまくいきません。ところが偶然車が轢いてつぶしてしまったのでしょう。このカラスはクルミを路上に置いて、車の力を借りることにしました。しかしどうも知恵がまわらないらしく、いつも置く場所を間違えています。いわゆる路側帯や縁石のあたりに置くのです。割れるわけがないのですが、彼?は、電線にとまって期待に胸をふくらませながら結果を見守っているのです。ばかなやつだなあと思いながらも、ちょっと哀れを感じました。
今のところ、クルミを割るカラスには、自力で割る派と車に割らせる派に分かれているようです。どちらが優れているというのではなく、好みなのではないでしょうか。車に割らせるにしても、走ってくる車の前に急降下してクルミをリリースするような、ひたすらスリルを楽しんでいるようなカラスもいます。自力で割るカラスも、落ちるクルミと一緒に急降下します。
あんなに手間ひまのかかることは、単に食欲を満たすためにやっているとはどうしても思えません。きっと楽しいからやっているのです。その証拠に、あるときふっつりとやめてしまいます。飽きてしまうのでしょう。
写真は、クルミ割りを始めた駐車場のカラスです。今まではカップルのうちの1羽しかやらなかったのですが、今朝は2羽とも挑戦していました。うまく割れるようになるでしょうか。
クルミをくわえて……
空中でリリース