今朝の朝日新聞「国会審議にタブレット」を読んで、思い出したのが、荘子の「はねつるべ」です。
孔子の弟子の子貢(しこう)が旅先で、井戸に降りて甕に水をくみそれを田んぼの畝に流し込んでいる老人を見かけ、「はねつるべ」という便利な道具があるのをご存知ないのですかと問うと、老人「仕掛道具が作られると必ずたくらみごとが行われるようになる。たくらみごとが行われるようになると必ず知巧を弄するたくらみ心が起こってくる。たくらみ心が胸中に生じると人間の純粋純白な本来の心は害(そこ)なわれ、本来の純粋潔白さが害なわれると霊妙な生のいとなみはかき乱されて不安定となる。霊妙な生のいとなみが不安定になれば、根源的な真理はもはや彼の生活を支えなくなってしまうのだ。はねつるべなら私だって知っているよ。たが気恥しくて使う気にはなれないのだ。」(「荘子 外篇」福永光司著より)
インターネットをはじめとした電子機器は、もはや我々の生活に欠かすことのできない物になっています。しかし、それらによって便利になり効率が上がった反面、それらに振り回され不自由になった面も確かにあります。何でもすべてをそれらに置き換えることが必要かという議論もしないまま、アリバイ作りに国の最高機関の国会で試行する軽薄さには呆れ返ります。
一方、2500年前からそれを見抜いていた荘子の先見性には改めて感服!
国会質疑にタブレット ただし1日限定 引用元:朝日新聞 2019.04.27.
衆院内閣委員会は26日、答弁する政府側、質問する議員の双方がタブレット端末に表示させた資料を見ながら審議をした。国会のペーパーレス化の一環で、衆参両院によるとタブレット端末を使った答弁や質問は衆参通じて初めて。
タブレットの利用は内閣委理事会で与野党が合意した。ただ、行政手続きの電子化を目指す「デジタル手続き法案」を審議する26日限定で、外部から質疑内容の指示を防ぐためとして通信機能の利用も禁じた。
行政電子化の旗振り役である平井卓也IT担当相は「皆さま方のご指示によりタブレットを使って答弁する」と片手に持って法案内容を説明。タブレットを手に質問した議員からは「画期的な審議」との声があった。 |