パソコンの買い替えで、古いパソコンを整理していたら、古い写真が保存されていました。2,011年に閉鎖された乗馬クラブで出会った馬や犬です。思い出が蘇ります。
そのうちの1枚。
モンタナです。騙馬(せんば:去勢された牡馬のこと。牡馬は発情期に興奮して危険な場合があり、種牡馬以外の牡は去勢されることが多い。)全身に豹紋があるアパルーサという品種です。アパルーサの多くは尻に斑紋があるのですが、このように全身に豹紋があるものもいます。(乳牛のホルスタインのような大きなまだらがある馬はピントと言います。どちらもアメリカの馬ですが、アパルーサとは異なる品種です。)地域の祭りに貸し出されることがあり、ボランティアで引き馬をすると、沿道から「シマウマ?キリン?」などと疑問符が投げつけられたものです。
クラブのオーナーによれば、日本有数のウェスタンの調教師によって調教されているとのこと。でもクラブにはウェスタンの人はいませんでした。ぼくは御殿場にあるアルカディアというクラブに通ったことがあり、そこで初級のウェスタンの手ほどきを受けたことがあるので、試してみました。
たとえばスライディングストップ。ウェスタン映画に時々、全速力で走ってきた馬が急停止し、もうもうと砂煙があがるシーンがでてきます。そのとき、止まるために前足が突っ張っているところに、後足が滑り込んでいきます。これがスライディングストップです。モンタナは、駈歩から軽く手綱を引くだけで停止しました。スライディングがうまくいかないのは、スピードが足りないか、乗り手が初心者だからです。
ウェスタンでは歩様の命令を騎座や脚でなく、言葉や音の合図で行うことがあります。並足は「walk!」、速歩は「jog!」、停止は「woh!」、駈歩の時kissです。kissはつまり、唇で投げキッスのような音を出すわけです。モンタナは音声の号令はうまくいかなかったのですが、kissは始めは脚の合図と同時に出していましたが、すぐにkissだけで発進できるようになりました。
そうなるとおもしろくて、クラブに一つだけあったウェスタンのサドルはサイズが小さかったので、馬銜(はみ)などと一緒にネットで自分用に買いました。床革から自分で作ったチャップス、御殿場でも使っていたハットを身につけ、全身豹柄の馬を乗り回すのは、20代から始まった乗馬人生の中でも最高の日々でした。
ただし、モンタナには致命的な問題がありました。前肢に重症の障がいがあったのです。蹄から始まった障がいが足全体に広がっているというのですが、時雨が降る季節になると、大きく跛行し、とても辛そうに見えるので乗ることさえためらわれてしまうのでした。