それって常識、非常識?
初めに断っておきます。これはどうでもいい話です。
我が家に新聞を配達してくれる店が、月1でミニコミ紙を発行して、チラシと一緒に新聞にはさんで配っています。編集者は、もともと地方紙の記者だった人らしいのですが、おいしいラーメン店や庄内の食文化を紹介したりしています。 読者にお薦めの本を3冊紹介してもらい、翌月はその人が紹介した知人が本を推薦するというリレー形式のコーナーもあります。先日は、なぜかそのバトンがまわってきて、ぼくは文系も理系も読まないだろう本を紹介しました。一つはカラスの研究・観察をしている動物行動学者が書いた「カラスの教科書」と早川いくをの「変な生き物」です。どちらも読み物としておもしろく、しかも知的好奇心を満たしてくれる、特に「変な生き物」には裏テーマ(真に変な生き物は人間だ)が隠されているというようなことを書きました。 さて、今日配られたそのミニコミ紙の特集は、「庄内人の勘違い=油揚げ問題」を取り上げていました。これは、前述の推薦本について編集者の人と打ち合わせしているときに出た話題がヒントになったのかもしれません。
庄内には「南禅寺」という豆腐があります。四角い豆腐ではなく半球型の、いわば角のない豆腐なのです。昔、京都を訪ねた庄内の豆腐屋が作った京風の豆腐だそうですが、実は京都には半球型の豆腐は存在しないそうです。「豆腐の角に頭ぶつけて死んじまえ!」は、一般には「豆腐が柔らかいからできっこない」ということになりますが、ここでは「豆腐には角がないから無理」という意味になるのかも、なんて思ったりしました。 それはそうと、ある時連れ合い(酒田生まれ)が「今夜の鍋には、豆腐がないから油揚げでも使おうか」と言うので、ぼくは、ちょっと不審に思いながらも冷蔵庫から油揚げ(薄揚げ)を出して切っておきました。すると、連れ合いが「あれ、なんで薄揚げなの?」と非難口調。 ああそうだった! こちらでは油揚げとは厚揚げのことだったのです。こんなことが時々起こり、我が家では「カルチャーギャップ」と呼びます。 東京の油揚げと厚揚げは、庄内では薄揚げと油揚げになるのでした。 他にも「タケノコ」といえば、山菜のネマガリダケ(チシマザサ)のタケノコのこと。私たちがタケノコと呼ぶ孟宗竹などのタケノコはモウソウと呼びます。そのモウソウと豚肉の味噌味の汁物「孟宗汁」は、家によっては酒粕を加えた濃厚なもので、庄内名物です。「妄想汁」ではありませんよ。 生まれてから一度も庄内以外に出た経験のない人は、自分たちの常識が他の地方では違うということを知らない。そこがまたおもしろいと思います。 ①を山形県人は「いちまる」と読みます。「まるいち」というと奇妙に聞こえるそうです。 庄内では、魚の切り身は皮の見えない側を上に置きます。これは京風というか関西風なのだそうです。しかしカレイの場合、酒田では白い側を上、鶴岡では黒い側を上に置くそうです。なぜなのかは不明。 東京だって、東京の常識が、実は地方では非常識ということがあるかもしれませんね。
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