菅直人元総理の 「原発の一時国営化による全原発廃炉政策(私案)」を入手いたしましたので、お届けいたします。
福島原発事故発生当時の総理大臣として筆舌に尽くしがたい「生き地獄」のご体験に立脚する本私案は、この上なく意義深いものと言えます。
関西電力で原発への信頼を心底から揺るがす事実が発覚し、原発が国民の反対を抑えて促進される背景が遂に衝撃的に露見しました。 原発を国策として推進してきた国が脱原発に十分責任を果たすべきことは論を待ちません。
原発の一時国営化により脱原発の実現を図る管直人元総理の私案に心から賛同いたします。
村田光平
(元駐スイス大使)
原発の 一時国営化による 全原発 廃炉政策 (私案) 引用元:菅 直人 (衆議院議員
<はじめに> 1998年、バブル崩壊 で 起きた 銀行の連鎖倒産 の 際 に、自民党小渕政権が「ブリッジバンク法案」という中途半端な 銀行 救済法案を出したのに対し、当時 私が代表を務めていた 野党民主党が「銀行の一時国有化」を内容とする金融再生法を提出し、 小渕総理に 丸呑みさせ、金融危機を 乗り切った ことがあります。その時 金融再生法など 政策 づくり の中心となったのが 現立憲民主党代表の 枝野幸男 氏をはじめ 与野党の若手議員 で、 マスコミは「政策新人類」と呼びました。原発ゼロの実現にもう一度「一時国有化」という手法が 有効ではないかと考え て 骨子をまとめました。
<原発ゼロ基本法案> 立憲民主党はすでに「原発ゼロ基本法案」を策定し、昨年 野党 4 党で国会に提出してい ます。 この法案 で は法 施行 後 2 年以内に 、 全ての原発を廃炉にする具体 的 な段取りを決める 実施法を制定する ことにしてい ます 。そこで日本の すべての 原発を廃炉にする 実施法について 「原発の一時国有化による全原発廃炉政策」を 検討してみ まし た。 参考にしたのはイギリスが国営電力を民営化 した 際 に 、原子力廃止措置機関( NDA を設立し、 古い原発は そこに移し て 順次廃炉に した 方法 で す。
<一時国営化するメリット> 電力会社にとってこれまで原発は電力を発生させ、その電力を売ることで利益を生み出す大きな資産で した。 国の方針として すべての 原発を再稼働させずに 順次 廃炉にすることを決めると 、 原発は資産価値が なくなる だけでなく廃炉費用を必要とする債務 に な ります。 このため電力会社は 発生する債務 処理の見通しがないまま原発 の 廃炉 を決断すること が極めてむ ず かしく、将来性がないことが分かっていても踏み切れません。 そこで、原発の廃炉に先立って全原発を一時国有化し、国の責任で廃炉をすすめる ことで電力会社の経営上の懸念を軽くすることを考え ま した 。 つまり 原発建設費用の償却 ・ 原発廃炉費用 などを あらかじめ 検証し て 試算 する。 廃炉費用も これ までに 各電力会社が積み立て た 資金で 足りるのか 足りない のか。不足する なら どの 程度な のかを 試算 する必要があります。 電力会社が当初予定した稼働期間よりも短い期間で廃炉にするため、 建設費の 償却や廃炉費用について 相当の不足分が出る可能性があります。 現在、原発を所有する各電力会社は再稼働を実現するため、新規制基準を達成するため膨大な設備投資をすすめています。関電の例がその一つです。いったん全原発の廃炉を決めればそうした費用は不要になります。その点からもできるだけ早く具体的な廃炉の段取り を示すことが重要です。
<国の責任> 原発事業はもともと国の責任ですすめられた面が大きいので、原発からの撤退においても国が責任主体にならなければ実現しません。国民に資金の不足がどのくらいになるのか詳細を明らかにしたうえで、電力会社の自主努力を中心にそれでも不足する場合には国の責任で廃炉費用の不足分を補うことも考える必要が出てきます。 その場合、各電力会社が全国に所有する膨大な送電網を売却して廃炉費用に充てることを検討すべきです。安倍政権が2020年に実施を検討している発送電分離は従来の地域独占の9電力会社の持つ送電部門を子会社化する中途半端な「法的分離」です。これでは従来の地域独占の9電力会社が送電についての実権を握りつづけ、再エネ発電業者など新電力の新規参入が阻害され自由に事業を拡大できません。 そこでドイツやスペインなどですでに行われているように、現在の電力会社とは全く別会社として全国的に送電を担う新たな送電会社を設立し、従来の電力会社各社が所有している送電網を全部新送電会社に売却する「所有権分離」を実施するのです。新送電会社は発電事業をしないので再エネ発電中心の新電力会社と従来の電力会社を公平に扱うことが担保され、電力自由化の観点からも重要です。 東電や関電など従来の電力会社が現在所有する送電網には膨大な資産価値があります。発送電の分離に伴ってそれら全国の送電網を新送電会社に売却し、その売却資金を原発廃炉にともなう電力会社の資金の不足分に充当することが可能です。そうした電力会社による自主努力を精一杯したうえで、それでも不足する場合には十分な国民的議論のうえで、国民の理解を得て国による財政措置が必要になります。国民の負担が大きくならないようなさらなる工夫が必要です。
<2021年までにめどをつける> 2021年には福島原発事故から10年となります。ドイツはすでに2022年までの原発ゼロを決めて準備をすすめています。日本でも急ぐべきです。全原発の廃炉が決まれば不要になる再稼働のための莫大な投資を早くやめさせるためにも、遅くとも2021年までには原発ゼロ基本法案につづく全原発の「廃炉実施法」を成立させ、原発ゼロへの道筋を決めるべきです。 与党自民党がそうした方向にかじを切らないのであれば次期総選挙で政権を交代し、原発ゼロ法案につづく廃炉実施法を成立させ、2021年から廃炉の具体的作業に入ることが原発事故の心配のない日本列島にするためにも日本経済の活性化にとっても望ましい道だと考えます。
皆さんのご検討とご理解をお願いいたします。
以上 |