久しぶりの出会いでした。
冬毛のため長く見える耳、灰褐色の姿、すっかり冬の装いになっています。でもこのリスは、去年の5月3日に出会った、生まれたばかりの兄弟リスだと信じています。彼らが遊んでいたエリアに近く、単独生活のはずなのに複数でいるし、接近できる距離が他のリスよりも近いのです。生まれたエリアのクルミの木が若いうえ、去年は不作でしたが、ここはクルミ畑といっていいほどクルミが多いのです。
はじめは松の木にいた彼(彼女)は、枝を走り、隣の木に飛び移り、木を駆け下り、また駆け上り、高校のテニスコートの縁を通って、生まれたエリアに戻っていきました。ほら、やっぱりあの兄弟だった。
久しぶりといっても、暮れまでは時々見かけました。それがパタリと気配を消したのは、この近くで松の木の伐採作業が始まったからです。いわゆる松枯れ病が蔓延しているのです。戦争中、松根油やら松脂やらを採集したという傷跡を残す古い松の葉先が黄色くなり始め、勢いがなくなり、ある木は根元に木屑が積もり始める。松を食い荒らすマツノザイセンチュウという小さな線虫を媒介するカミキリムシの幼虫のしわざです。線虫は木の導管をふさいで、根から吸い上げる水の流れを阻害するのだそうです。冬になると、木全体が枯れて目立つようになります。
木の伐採は今でも冬に行なわれるのですね。雪が積もっているほうが運びやすいとか、木が成長を止めているし、水分が少ないからいくらか軽いとかいうような理由があるのでしょうか。昔ニュース映画で見たように一回で豪快に伐り倒すのではなく、小分けにしてクレーンで下ろして積み上げます。現場には様々な用途の小さなキャタピラーが終結していて、林床は戦場のようなわだちができています。
そういうわけで、松の木に巣を作るリスたちが、怯えてパニックになってはいないかと心配していたのでした。
先日、テレビで見たフィンランドのリスが、日本のリスとそっくりだったので調べると、どちらもキタリスというリスの亜種で、近い親戚らしいのです。エゾリスは別系統とか。ロシアの森林のリスはエゾリスに近いのかな。昔のディズニー映画「ペリ」は、アメリカのマツリスという種類でしたが、これもキタリスなのでしょう。彼らキタリスはマツなどマツ科の木に依拠して暮らしているようです。たしかに松葉を丸めたような大きなボール状の巣を作ります。ダニを防ぐなど、針葉樹の樹脂の殺菌効果も必要なのでしょうね。
すると、松枯れ病の蔓延はリスにとっても死活問題ということです。おじさんたちに感謝しなければね。