東京オリンピックの延期がきまりました。
国民の多くは、とうに予定通りの開催は無理だろう思っていましたが、やっとの感があります。
5日前の20日朝日新聞朝刊に[JOC理事の山口香さん「五輪、延期すべき」]という記事がありました。まだ安倍晋三首相が、東京五輪・パラリンピックを「完全な形で実現する」と意味の分からないことを言っていた時期で、JOCの理事にしては、思い切ったことを言ったもんだ。
まさしく「王さまはハダカだ」と言ったに等しいと感心しました。
案の定、間髪入れずJOCの山下泰裕会長が、山口発言に「極めて残念」とコメント。翌日の朝刊には、IOC委員の渡辺守成氏がインタビューに答えて「早急に結論を出さず、通常開催をめざして最善を尽くすべきだ」「いま内部の議論を公表すると間違ったメッセージを発信しかねない」と政権や山下会長を擁護する発言。
これでは、現状を見ず政権の意向や顔色を忖度する今の官僚たちとどこも変わらない。
山口氏は日本を代表する女子柔道選手でしたが、山下会長も同じ柔道の金メダリスト、スポーツ界まで内閣府の人事権が及んでいるわけでもないでしょうが、何とも寂しいというより危険な感じさえします。
かつて日本にも自由にモノが言えない時代があったことを忘れてしまったのでしょうか。それとも既に言えない時代なのかな?
JOC理事の山口香さん「五輪、延期すべき」 引用元:朝日新聞 2020.03.20.
新型コロナウイルスの感染拡大で開催への懸念が高まっている東京オリンピック(五輪)について、日本オリンピック委員会(JOC)理事でソウル五輪女子柔道銅メダリストの山口香氏(55)が19日、朝日新聞の取材に応じ、「アスリートが十分に練習できていない状況での開催は、アスリートファーストではない。延期すべき」との考えを示した。27日のJOC理事会でも同様の趣旨の発言をするという。
開催国のオリンピック委員会の理事からも、今夏の開催への異論が出始めた。山口氏は「世界中で正常な生活が送れない状況がある中で、7月に開催して誰が喜ぶのか」と指摘。その上で「コロナウイルスとの戦いは戦争に例えられているが、日本は負けると分かっていても反対できない空気がある。JOCもアスリートも『延期の方が良いのでは』と言えない空気があるのではないか」と話した。
JOCの山下泰裕会長はこの日、アジアの各国の五輪委員会と国際オリンピック委員会(IOC)との電話会議で「世界中のアスリートたちが安心・安全な形で五輪に参加できるように全力を尽くす」と発言し、今夏の五輪開催への意欲を改めて示している。 |
JOC山下会長、理事の延期発言に「極めて残念」 引用元:朝日新聞 2020.03.20.
日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長は20日、JOC理事でソウル五輪女子柔道銅メダリストの山口香氏が東京オリンピック(五輪)を「延期すべき」と発言したことについて、「色々な意見があるのは当然だが、JOCの中の人が、そういう発言をするのは極めて残念」と述べた。聖火引き継ぎ式が行われた航空自衛隊松島基地(宮城県)で報道陣の質問に答えた。
山口氏は19日、朝日新聞の取材に応じ、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、東京五輪について「アスリートが十分に練習できていない状況での開催は、アスリートファーストではない。延期すべき」との考えを示した。27日のJOC理事会でも同様の趣旨の発言をする考えも明らかにしていた。
山口氏は「世界中で正常な生活が送れない状況がある中で、7月に開催して誰が喜ぶのか」と指摘。その上で「コロナウイルスとの戦いは戦争に例えられているが、日本は負けると分かっていても反対できない空気がある。JOCもアスリートも『延期の方が良いのでは』と言えない空気があるのではないか」と話していた。 |
通常開催へ、最善尽くすべきだ この夏に人生かけてきた、選手のために 渡辺守成・IOC委員に聞く 引用元:朝日新聞 2020.03.20.
新型コロナウイルスの感染拡大で7月24日開幕の東京五輪への懸念が高まる中、国際体操連盟(FIG)会長で、国際オリンピック委員会(IOC)委員を務める渡辺守成氏(61)が朝日新聞の取材に応じた。延期論も広がるが、「早急に結論を出さず、この夏に人生をかけてきた選手のためにも、通常開催をめざして最善を尽くすべきだ」と語った。
渡辺氏は17日、FIG会長としてIOCと各国際競技連盟(IF)のテレビ会合に参加した。日本人で唯一のIF会長で、IOCの信頼も厚く、その考え方を理解する存在。「2時間近く、全てのIFが意見を聞かれたが、中止、延期を求める声はなかった」と明かす。12日にギリシャで行われた聖火採火式の際、IOCのバッハ会長らと東京の大会組織委員会幹部との会合にも出たが、中止・延期は議題に上がらず、「開催に向けての一致団結」を確認したという。
しかし、その後も各国で感染は広がる。バッハ会長が19日付の米紙で東京五輪について「異なるシナリオは複数検討している」と発言した。米国の陸上、水泳連盟やブラジル、ノルウェーのオリンピック委員会など、延期を求める声もにわかに強まっている。
■延期論にも理解
それでも、渡辺氏は「IOCは世界保健機関や各国政府のトップとのパイプがあり、綿密な検討をしている。やみくもに突っ走っているわけではない。内部で延期を含めた複数案を検討するのは当然だが、いま公表すると間違ったメッセージを発信しかねない」。メディアで延期論が出ている現状を理解しつつ、「すでに東京五輪に出る選手の57%は決まっている。そうした選手の多数は今夏の開催を望んでいるはずで、そうした声も取り上げるべきだ」と求める。
渡辺氏は、新型コロナウイルス対策を立てた上での大会運営に自信を持つ。審判の不正などでIFが資格停止になったボクシングでは、IOC特別作業部会の座長として東京五輪予選の運営を任されている。「セネガルとヨルダンで開いたボクシングのアフリカ、アジア予選では、数十カ国から300人以上の選手が参加したが、感染者は出なかった。予防対策の有効性を証明できた」と話す。
4月に予定していた体操のワールドカップ東京大会でも、「入国者の2週間待機」の制限がかかった中国、韓国の選手に対し、陰性証明書の提出などで制限を免除してもらえるよう外務省、文部科学省などに働きかけた。ほぼ、承認を取りつけた段階で審判の来日がかなわず、大会は最終的に中止になった。「同じ方法を五輪で採用すれば、選手は来られるし、感染拡大も防げるはずだ」
■追加負担で対策
国内外の世論が延期やむなしに傾く中、さらに大胆な私案も明かした。
「一部報道に延期には数千億円の追加負担が必要とあった。そこまでの巨費をかけなくても、コロナ対策費に投じて今夏の開催をめざしてはどうか。参加各国のオリンピック委員会に対策費を補助する。そうすれば各国にはコロナと闘った東京オリンピックのレガシーが残り、世界における日本のプレゼンスも上がる」
(聞き手・塩谷耕吾、稲垣康介) |