福島放射性汚染水の海洋放出は内外の世論を無視して決められましたが、その背後にかねてからこれに了解を示してきた国際原子力機関(IAEA)の存在があります。
東京五輪開催への異常の固執の背後には国際オリンピック委員会(IOC)の存在があります。五輪と原発は表裏の関係にあることが奇しくも表面化したと言えましょう。
IAEAと電力会社とが職員を派遣するなど特殊の関係にあることは公知の事実です。また、五輪については「 IOC は超世界政府でも超国家機関でもない、私企業の私益追及に人類の命を懸けさせてはならない」との至言が耳に入るようになりました。
IAEAの改革については大統領、首相経験者の賛同を得ていながら時間切れで発表に至らなかった7年前の「共同声明案」が存在します。
IOCのBach会長に対しては度重ねて福島事故に由来する放射能の危険性に関するメッセージを送ってまいりましたが、このほど下記のメッセージで日本で最も信頼されている原子力の専門家 Arnie Gundersen氏から届けられた情報を同会長に送りました。これに関するBCC英文発信で、原子力緊急事態宣言が解除されていない福島の放射能の危険を無視続けることは不道徳、無責任で歴史の法則に沿うものではない旨述べました。
この度の放射性汚染水の海洋放出は国際社会に衝撃を与え、現状改革の必要性につき覚めさせるものと思われます。
皆様のご理解とご支援をお願い申し上げます。
村田光平
(元駐スイス大使)
福島の教訓 引用元:共同声明
2014年3月11日
共同声明
人間社会が受容できない惨禍をもたらしかねない科学技術は事故の可能性につき如何なる数値が援用されようとも完全にゼロでなければ使用してはならないというのが、福島の教訓である。
放射能汚染をもたらす行動はほぼ永久に人類と地球に計り知れない損害を与えるものであり、倫理と責任に欠けるものとして非難されなければならない。
日本は悲しいかな核エネルギーの軍事利用、民事利用双方の犠牲となった。福島の後、日本は放射能汚染に苦しむのみならず、事故の悲惨な結果の収束を図るために容易には克服できない諸問題に直面している。
核技術は不可分であり、軍事、民事に分けることは出来ないことは明確に認識されている。日本は今や民事、軍事を問わない完全な核廃絶を世界に訴える歴史的使命を有するものと信じる。これが福島の教訓である。
このような見地から次の提案を行うものである。
Ⅰ.核拡散の防止と原子力発電の促進という両立できない使命を与えられたI.A.E.A.は改革されねばならない。
2.現存する原子力発電所の安全に対する国際的管理は強化されねばならない。
現在人類が直面する危機は文明の危機である。「父性文化」に立脚した力の文明を、命に至上価値を置く「母性文化」に立脚した和の文明に転換しなければならない。
人類が直面する危機の根深い原因はあまねく世界に広がった倫理の欠如である。未来の世代に所属する天然資源を濫用し枯渇させ、永久に有害な廃棄物と膨大な債務を後世に残すことは倫理の根本に反するものである。自然と世界の資源は如何なる結果をもたらすかに配慮することなく利用されている。
地球倫理の確立なくして、未来の世代に美しい地球を残せるような人類の文明を創設することは出来ない。
このような考えからユネスコクラブ世界連盟(WFUCA)が呼びかけている国連倫理サミットの開催と地球倫理国際日の創設を強く訴えるものである。3月11日を地球倫理ユネスコ国際日とすることを呼びかけたWFUCAの公式声明を全面的に支持し、国際社会に賛同を求めたい。同サミットはオバマ大統領の核兵器のない世界のヴィジョンに向けて道を開くものと確信する。
この地球倫理国際日は、紛争を解決する手段として決して戦争に訴えないとの決意を毎年新たにすることを可能としよう。
核エネルギーを使用しない人類と地球の長期にわたる安全のために、ライフスタイルについて短期間の犠牲を払う覚悟が必要である。自然・再生可能エネルギーは倫理と連帯に立脚し、環境と未来の世代の利益を尊重する新しい文明の基礎となり得よう。 |