廣野良吉成蹊大学名誉教授より憲法前文で力強く訴えているように、「国際社会において名誉ある地位を占めるために」わが国が今なすべきことについてのご卓見をお寄せいただきましたので下記お届けいたします。
ご報告した五輪廃止論の動きについては下記BCC英文発信で世界に拡散済みです。その中でG7サミットでの支持取り付けの発表により尾身会長の科学に立脚した慎重論が実質的に排除されたことは、去る2月のバイデン大統領の科学重視の助言を無視することになり、後日批判されうる可能性に言及いたしました。
市民の直観はインドデルタ株の感染拡大は、英国株の例から判断して専門家の想定を上回るスピードで実現し得ると懸念しております。
皆様のご理解とご支援をお願い申し上げます。
村田光平
(駐スイス大使)
----------------------------------------------------------(21日発信BCC英文発信)
<By hastily obtaining the support of the G7 Summit for the holding of the Tokyo Olympic Games, P.M. Yoshihide Suga has obliged his senior scientific advisor, Dr. Shigeru Omi ,to refrain from expressing his recently much publicized position for cancellation. He could be criticized to have forgotten the President Joe Biden’s advice concerning the importance of science given last February.
The “Tokyo Shimbun Newspaper” of today published an article written by a prominent philosopher Mr. Setsu Uchiyama, calling for starting the discussion on the abolition of the Olympic Games whose charter has become dead letters.
A page has certainly been turned.
Civil society will no longer remain silent.>
(廣野良吉先生のご見解)本文
Sent: Monday, June 21, 2021 12:47 PM
Subject: Re: 五輪廃止論の台頭
村田大使殿、
核兵器、原発、東京オリンピックパラリンピックについていつも明白なメーッセージ有難うございます。
今月のG7の公式共同声明と日本の政府および主要マスコミ報道の隔たりにつしての私見をお許しください。
G7 Cornwall Communique は国際社会が直面している新型コロナウイルスパネデミック、経済、貿易・投資、失業・貧困、人権、気候変動、アフリカ、アジア、中東欧、中南米・カリブ海などの地域特有問題等、広範な課題に対するG7首脳のshared beliefs, values and responsibilitiesに基づく一連の共同行動プログラムを採択しています。
その最後(Conclusion)の第70パラで、“we look forward to joining with others to ensure we build back better, in particular at the G20 Summit, COP26, and CBD15 and the UN General Assembly, and reiterate our support for the holding of the Olympic and Paralympic Games Tokyo 2020 in a safe and secure manner as a symbol of global unity in overcoming COVID-19.”と決意を表明しています。
しかし、肝心なことは、東京オリンピックパラリンピクについては、日本政府の強い要望へ対応して、共同声明の最終項目に付け加えているだけで、40頁以上に上る主要課題とその解決のための「共同行動プログラム」に入っていません。それにも拘わらず、
① 日本の主要メデイアでは、「G7の主なポイント」として、五輪の開催に言及して、恰もG7首脳の「共同宣言」主要共同プログラムそのものへ入っているかのように報道していること;
② G7首脳は、上記引用文章にあるように、東京オリンピック・パラリンピックそのものを無条件で支持しているのではなく、”support for the holding of the Olympic and Paralympic Games Tokyo 2020 in a safe and secure manner'として、「安全で安心できる方法 で開催されること」を前提として支持している。
以上から読みとれることは、
① G7首脳は、日本国民の半数以上が開催反対を表明している東京オリンピック・パラリンピク開催、さらに日本国民は開催の場合でも有観客での開催に反対している事実に配慮して「安心安全」という前提条件を重視しており、安全安心を無視して有観客で強行しようとしている国際オリンピック委員会(IOC)の意向とそれに基づく同大会の開催を支持しているわけではありません。
② 菅政権と日本リンピックパラリンピック組織委員会は、現時点で「安全安心な開催」についの基準を国民へ明示することなく、IOCの意向を尊重して開催への準備を着々と進めており、国民の不安への配慮が足らないといわざるを得ません。
③ さらに我が国の主要マスメデイアも、「東京ゲームのスポンサー地位」を、この機に至っても十分発動せず、IOCの強硬な対応へ警笛を鳴らさない状況を重々反省して、「平和の祭典」、世界のすべての人々が安心安全に参加できるというオリンピックの精神へ復帰するよう、世界の主要マスメデイアと連携して、IOCへ強く訴えるよう心から願います。戦後営々と築き上げてきた「良心」に基づく「国民と共に歩み、国民に賢明な選択肢を示す」という素晴らしい伝統へ是非回帰して下さるよう願います。そして、
④ 菅政権も主要マスメデイアも共に、小生が口癖のように申している”Better Late than Never'の精神に立脚して、IOCの金権専制政治ではなく、是非是非日本国民の生命と安全を優先するよう期待して止みません。 こうしてこそ、我が国がその憲法前文で力強く訴えているように、「国際社会において名誉ある地位を占めるために」わが国が今なすべきことではないでしょうか。
廣野良吉
五輪廃止論の台頭