小学生のころ、「森は生きている」という劇を公会堂に見に行きました。わがままな王女が、冬なのにマツユキソウが欲しいと言い出し、意地悪な継母に命じられて森に探しに行く娘の話でした。森の奥で「12月の精」に会い、マツユキソウを手に入れるのだったかな。
昨日はひさびさに青空がのぞき、しんと静まり返った森で、それでも命の営みの片りんを見つけました。まさに森は生きていることを再確認したのでした。
俗に「森のエビフライ」などと呼ばれます。雪の上に無数の鱗片が散らばっていました。松ぼっくりです。カケスが散らかしたのかと思いましたが、その中にこの「エビフライ」がいくつもあったので、納得です。これはリスが松の種を食べた食痕です。
でも、この森のリスはあまり松の実を食べないのです。クルミが豊富にあるので、ドングリにも松の実にもあまり興味がなさそうです。
でもさすがに、このごろの深い雪、しかも昼間に表面が溶け、夜になると再凍結。雪は固くしまって、クルミを掘り出すことができない。そこで非常食として松に手を付けたと推理します。まだ全面的に広まっているわけではなく2カ所ほどですが、リスの間でこの冬の流行になるかも。
次はこの写真。
ツグミの仲間で虎縞、いわゆる虎斑(とらふ)の模様があるので標準和名はトラツグミです。でも昔から鵺(ヌエ)と呼ばれてきました。夏の夜、森の奥深くで不気味な声で鳴き続けるので、平安時代には妖怪と信じられていたとか。「ヒー、ヒー」と単調に鳴き続けると、学校キャンプの子どもたちが「家に帰りたい」と泣いたものです。
胸側には三角形を連ねたうろこ型の模様がありますね。能などでは、この模様の衣裳を着た人物は、鬼や蛇の化身とか鬼や蛇そのものということになっています。すると、トラツグミもやはり妖怪系の生き物なのかな、などと想像したり。
雪の上には、タヌキやキツネの足跡。リスが高いところから挨拶の鳴き声を聞かせてくれるかもしれません。静かな森にも、命が輝いています、なんてNHKみたいでしょ。