気候戦争
映画監督の河瀬直美氏が東大入学式の祝辞でロシアによるウクライナへの軍事侵攻について触れ、 「ロシアという国を悪者にすることは簡単である。一方的な側からの意見に左右されて、本質を見誤っていないだろうか。誤解を恐れずに言うと『悪』を存在させることで、私たちは安心していないだろうか」と問題提起したとの報道がありました。 最近、新聞・テレビニュースのトップは大概ウクライナ、それも公共施設・民間施設の破壊や民間人犠牲という無惨なニュースばかり。 「帝国主義ロシア」「独裁者プーチン」と叫んでも、何の解決にもなりません。
今朝NHKラジオで、あの『人新世の資本論』の著者で経済思想家の斎藤幸平氏が『気候戦争』なる彼の造語でロシアのウクライナ侵攻を解説していました。 地球の温暖化により、脱炭素化の経済インフラ全面転換が求められ、石油・石炭・天然ガスの資源国ロシアは、大幅な減収が見込まれる。一方その気候変動が、ロシアの年間平均気温上昇率を世界平均より2.8倍の速さで上昇させ、国土の65%が永久凍土のロシアにとって干ばつ、熱波などの強烈なダメージを受けるという深刻なジレンマが予想される。 そこで狙われたのがウクライナ。もとはソビエト連邦の一員でもあり、ヨーロッパの穀倉地帯、半導体製造に必要な天然資源もあり、ヨーロッパのシリコンバレーとも呼ばれる高いIT技術力もある。 食料・資源・ITを兼ね備えた国。それを西側に取られたくない焦りで始めたのが今回の侵略戦争。 今後もこれに限らず、気候変動が火種となる戦争が増加していくと斎藤氏は予想し『気候戦争』と名付けたとのことでした。
こう考えてみると、単にロシアを悪者にして叩くことに専念するのではなく、地球温暖化が招くであろう、こういった問題の根本を考えるのが先進国の役目ではないかと思うのですが。
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