この季節に森で見かける花2種。
どちらもサトイモ科テンナンショウ属の花です。コンニャクやミズバショウ、カラーなどとも近縁、有毒です。
おもしろいことに、前者は時々盗掘されます。持ち去って自分だけで楽しむのか、高値で売れるのかわかりませんが。
2つ目の花は、なぜか嫌われがちです。こんなにきれいなのに。もし花屋さんで売っていたら、それでも嫌われるだろうかと思います。
露骨な人気の違いは、おそらく名前です。前者は、地中から伸びる花が、鎌首をもたげるヘビのように見えるにも関わらず「ウラシマソウ」という名です。長く伸びたひも状のものを、浦島太郎の釣り竿の糸に見立てたのだそうです。
2つ目の花は「マムシグサ」という名です。紫色の花もあり、この緑の花は「アオマムシグサ」なのだそうですが、どこにもマムシや蛇のおもかげはありません。実は、この花は地中からではなく、茎の先端についています。その茎に、紫のまだらがあり、それがマムシのようなヘビ柄なのです。たしかに、春先、先のとがった茎が地中から伸びてくる姿は、地面からヘビの尾だけが出ているようにも見えますが。
しかし、自分の目や五感でなく、名前や世間の噂や評判でものごとを評価する日本人のなんと多いことか!
「カラスって賢いし、遊びの天才だし、見ていておもしろいよ」と言っても、「あ、カラスね。嫌いだなあ」のひとこと。「カメムシって姿形はきれいだよ」と言えば、宇宙人を見るような目で見られる。臭くないカメムシだっているのだし、パクチーが苦手なぼくは「あんなカメムシ臭いもの」などとは、決して言わないようにしているのですが。
因みに、パクチーが嫌いなのは、匂いがカメムシみたいだからではなく、匂いそのものが苦手だからです。カメムシはたとえ臭くても、嫌いではありませんし、「あんなパクチー臭い虫」などとも決して言うつもりはありません。(パクチーは育てたことがありますよ。あの実は、カレーに欠かせないスパイスのコリアンダーですから。)
知人に、「梅雨になると、毎日雨ばかりでいやだ」と嘆く人がいます。酒田人です。
ぼくは「酒田は梅雨入りしてもあまり雨が降らないから、儲けものだ」と喜んでいるのですが。
梅雨前線が停滞する典型的な梅雨型気圧配置では、前線は日本列島の太平洋岸に停滞するので、日本海側は好天に恵まれることが多いのです。雨が降るのは梅雨末期とか、前線が列島を横断するようにかかる時、最近増えた日本海を進む爆弾低気圧の影響などの時です。でも80を超える知人は、東京中心の視点で書かれた学校の教科書で教えられた通り、梅雨はじめじめした雨が降る続く季節だと憂鬱になっていて、自分の80年の人生経験は何も生かされていない。晴れた日の記憶は消え、降られた記憶しか残っていないのでしょう。そう言って冷やかすので、ぼくは嫌われ者なのですが。