今日の物質主義は貪欲に根差すものであり、人類と地球の将来を脅かしております。
マハトマ・ガンディは「地球は各人の必要は満たし得るが、各人の貪欲を満たすことはできない」と述べております。
この指摘はグローバリゼーションがもたらす問題の背景を明かしております。
いわゆるGDP経済学は文化、伝統、家族、社会正義といった計量化乃至貨幣価値であらわされないものは全て無視します。
世界中に普及している経済至上主義は現世代の倫理の崩壊をもたらし、その結果、現世代は自己中心の立場から未来の世代を犠牲にして天然資源を濫用して繁栄を築きつつあるのです。
これが現在の環境危機の背景です。この倫理の欠如は地球規模で横行しております。
このような立場から、倫理と連帯に立脚し環境と未来の世代の利益を尊重する文明の創設を考究するべき時期が到来したと言えます。
この新しい文明は現在の物質中心のものから精神中心のものに変容するべきです。
ここで想起されるのは「知足」の重要性です。
この考えはアジアの精神指導者、仏陀及び老子が説いたものです。
これは幸福=富÷欲望という仏教徒の考えに沿うものです。
地球倫理に関しては、超自然的な存在、もしくは摂理を信じる心が宗教を持つ者と持たぬ者に共通な倫理の基盤になり得るのです。主要な宗教の共通の倫理の基準と市民社会の良心を統合すれば地球倫理の確立に有効な基盤になり得ると思われます。
真の指導者は人類と地球の将来に責任を負うべきです。社会のすべての分野で知性のみならず感性を備えた指導者を養成する必要があります。そのため市民社会はますます重要です。すべての部門でのヴィジョンと理想を備えた指導者の育成は至上課題です。
最後に経済至上主義に対する文化の逆襲に言及いたします。「経済至上主義は「職場改革」の例に見られるように「人間疎外」を生みました。過度の効率の追求は人間の尊厳を傷つけ無視することになります。
文化は基本的な倫理の増進に寄与します。文化交流は連帯を生みます。人間疎外の傾向が強まる状況下で文化の逆襲が痛切に求められます。
その際重要な留意すべき点があります。それは父性文化と母性文化の際立った相違点です。父性文化は競争と力を重視しますが、母性文化は和と弱者配慮を重視します。
歴史は力と支配に立脚した父性文化が破局的結末をもたらすことを示しております。
それ故にこそ現在の父性文明を倫理と連帯に立脚した母性文明に移行させなければならないのです。
上述の考えは現実から保遠いい理想と映じるかもしれません。しかし現実を理想に近づける力の存在を信じております。これは超自然的な存在の意思として、もしくは天地の摂理として理解されうるでしょう。この力の存在は数多くの文明の興亡に精通する歴史の教訓が立証しております。
人力を超えるこの力こそ人類と世界の将来に我々が今なお希望を抱くことを可能にしているのです。
追伸 国連倫理サミットの三位一体の目標である1.地球倫理の確立 2.父性文明の母性文明への転換 3.核廃絶の2、に関して別添の父性文化と母性文化の比較表はその必要性を十分納得させるものといえます。
父性文化と母性文化の特徴 引用元:比較表
現実に求められるのは、両文化のバランスであり、望ましい「度合い」だと思われます。 母性文化の潮流は、究極の破局に向かう現在の「力の文明」を母性文化に立脚した「和の文明」に転換するために不可欠なものであり、歴史的な意義がみとめられます。
父性文化 母性文化
・目標との関係 進歩 ――― 進化 直進 ――― 循環
・他者との関係 自己中心 ――― 連帯 競争 ――― 調和 対立 ――― 協調 弱者切捨て ――― 弱者への配慮 排他性 ――― 開放性 厳格 ――― 寛容 ヒエラルキー ――― 対等
・自己実現との関係 知性重視 ――― 感性とのバランス 強欲 ――― 少欲知足 権力 ――― 哲学
・目的達成手段 実力行使 ――― 対話 トップダウン ――― ボトムアップ 指揮統制 ――― 自発性
・環境との関係 自然征服 ――― 共生〈トモイキ〉 左脳 ――― 右脳
・その他 絶対主義 ――― 相対主義 神 ――― 生命 保守主義 ――― 革新主義 原子力エネルギー ――― 自然エネルギー 独裁 ――― 民主主義 |