12月1日、雪が降っています。みぞれまじりではありますが、一時道路を白く染め、車にも歩行にも影響が出ています。冬の初日に雪なんて、なんと律儀な!
さて、今年の秋冬は森の木の実が鮮やかです。ムラサキシキブの紫色、ガマズミやノイバラ、ツリバナ、マユミ、コマユミなどです。例年だと、なぜかこの森に限ってあまり実をつけなかったのですが。
もともと松林であるこの森の松の木が、「マツクイムシ」の被害で大量に伐採され、日当たりが変わったためかもしれません。
因みにマツクイムシという名の虫が存在するわけではなく、マツノマダラカミキリという昆虫が媒介するマツノザイセンチュウという線虫が、松の導管をふさいで枯らしてしまう被害です。特に冬になると、被害木が茶色く枯れて目立ちます。木の根元には大量のおがくずのようなものがたまるのは、羽化したカミキリが外に出るために食い破った跡でしょうか。また枯れ始めた松には白く固い、丸いキノコが発生します。
愛するリスたちは、この環境の急変にもめげず健気に暮らしていますが、エリア内に針葉樹があることが条件だと言われているので、私たちは心から心配しています。
隠れ家
実は移住以来、この森の木の実がほとんど実らないことが気になっていました。アカシアとかムラサキシキブ、ミズキ、クマノミズキ、オオバボダイジュなどです。これらの花が咲いて、良い香りが漂ってくる季節になると、ミツバチなどが集まってきて、そのうれしそうな羽音がワーンと聞こえてきます。まるで木が命の歌を歌っているようだと思ったものですが、そんな現象は移住したてのころだけでした。その後は、同じハチでもクマバチばかりで、ミツバチはいてもほんの少しです。バイオリンとコントラバスほど両者の羽音には違いがあります。(以前、歌う木の取材に来たNHK山形のキャスターに、上司が『ハエの羽音と区別できるのか?』と糺したそうですが、ハチとハエでは全く違います。)
さて、いなくなったのはハチばかりではありません。どこにでもいたはずのテントウムシも、いざ探してみると見つからないのです。テントウムシが食べるアリマキも。
ナラノキにバナナトラップをしかけてもカブトムシはほとんど入りません。ミノムシなど全国的に見当たらなくなったのではないかな?
見た目に美しい庄内平野の水田。しかしその美しさは観光ポスターのそれです。水面に波紋を広げて鳴くカエルの声がないのです。トノサマガエルはかなり以前から。コロコロ鳴く小さなアオガエルも最近は見かけません。森ではアマガエルが鳴くけれど、彼らは田んぼで生まれたのではなさそうです。
以前、これは農薬のせいではないかと書いて投書したところ、新聞社の担当者に「そこは根拠がない」と言われ削除したのですが、やはり農薬を疑わざるを得ないと思います。
ミツバチの大量死の犯人にネオニコチノイド系農薬が疑われているのは有名な話です。日本でも米に斑点を作って品質を下げるカメムシの駆除のために、畔に散布されています。
米が自由化されたことは、自由競争をあおる結果になりました。等級を上げる、高い等級を維持するのは米農家にとって最優先事項ですから、やめるわけにはいかないでしょう。
しかし、自然は微妙なバランスの上に成り立っていて、一つの種が絶滅すれば影響が広がります。ハチなどの昆虫がいなくなればリンゴ、ナシ、サクランボ、ブドウ、桃などの果樹やイチゴ、メロンなどの受粉ができなくなることにもなります。
昆虫に有害なものが人間に無害であるはずはないですよね。昔のDDTを思い出すまでもなく。
私たちの子ども時代とは異なり、虫が苦手だということが恥ずかしいことではない現在、昆虫が消えたことは問題にされないどころか、喜ぶ風潮さえあります。これもまたおそろしいことです。昆虫や野鳥に起こることは、明日人類に起こることなのに。
話は飛びますが、ロシアはウクライナの原発を執拗に攻撃していますね。それは明日の日本に起こり得る脅威ではありませんか? 核兵器を使わなくても、原発をミサイルで攻撃すれば電気が止まり、デジタル頼みのシステムはストップし、大量の放射線を浴びて無数の犠牲者が出るでしょう。それでも防衛費を増やし、原発を再稼働、いや増設するという政府の方針の無茶ぶりは、私のような「素朴な」東北人にもよくわかります。
「他山の石」とはこのことだと思うのですが。