始まる原発回帰批判
市民社会は原発回帰の新政策はフクシマの悲劇を全く忘れたもので不道徳・無責任そのものととらえております。27日付沖縄タイムズの下記社説はこのことに対する国民の怒りを反映するものとして極めて注目されます。
記 社説[原発政策大転換]福島の事故 忘れたのか
東京電力福島第1原発事故から11年余り、岸田文雄政権が原発推進へと大きく舵(かじ)を切った。安全神話が崩壊した「福島の教訓」を忘れたわけではあるまい。 将来に禍根を残す決定だ。 原発を巡り政府が、次世代型への建て替えや、既存原発の60年超の運転を可能にする基本方針をまとめた。 脱炭素化政策を議論する「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」で、GX実現に向けた方針として示された。 次世代型は安全性が高まるとされ、2030年代の運転開始を目指すという。具体的な場所は明示していないが、福井県の関西電力美浜原発などが候補に挙がる。 福島事故後、原発の運転期間は「原則40年、最長60年」と定められた。新方針では再稼働のための審査対応で停止した期間が除かれ、60年超の運転が可能となる。
原子力は「可能な限り依存度を低減する」とし、新増設や建て替えは「想定していない」というのが、従来の政府方針だった。7月の参院選でも自民党は次世代型の建設などを公約に掲げていない。 それが与党大勝の参院選後、原発活用の検討を岸田首相が指示したのだ。 ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー危機を背景に、新規建設、長期運転に踏み込んだ形だ。 確かに電力の需給逼迫(ひっぱく)や料金高騰は深刻だが、ウクライナ危機に乗じた、あまりに乱暴で拙速な政策転換である。
■ ■ 福島県には、今も7市町村に原則立ち入り禁止の帰還困難区域が残り、3万人近くが避難生活を続けている。 福島の住民に限らず、原発回帰への懸念、安全性に対する不安は大きい。
次世代型は「革新軽水炉」と呼ばれる原子炉が有力という。ただ安全性がどの程度高まるかはよく分かっていない。建設費も1基1兆円規模といわれ、国民負担が発生する可能性もある。
原発の60年超運転については、政府方針を後押しする形で原子力規制委員会も見直し案を了承した。 了承はしたもののリスクの高い老朽原発で60年以降の安全性を確認する具体的な方法は示していない。点検方法など詳細な検討も先送りした。 10年前、規制委は原発推進の経済産業省から独立する形で発足した。だが、今回の議論は経産省と歩調を合わせるように進んだ。 事故の教訓だった「規制の独立」も揺らいでいる。
■ ■ 基本方針を決定したGX実行会議は、脱炭素社会の実現に向けた産業の転換などを議論する場だ。原発政策を中心に据えた会議ではない。脱炭素を前面に出せば、批判が抑えられるとの思惑も透ける。 そもそも脱炭素の主力は再生可能エネルギーだ。「核のごみ」問題もクリアできていない。 安全保障政策の大転換に続き原発政策も、国会での議論や国民への説明を軽視して進められている。 到底容認できるものではない。 以上
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