雪が解けて、林床に春の日光が差し込むころ、何もなかったところに急に芽をだして急いで花を咲かせる植物があります。その多くは、花が終わると、おそらく実をむすぶのでしょうが、あわてて地上から姿を消してしまいます。そのような花をスプリングエフェメラルと呼ぶそうです。「春のはかなきもの」といった意味でしょうか?
そんな花が咲き始めたという情報に、今日は鶴岡市大山地区の上池界隈まで足を延ばしました。登山ではないので、出発は10時半ごろとして、コンビニで昼食を買い込んでいきます。そして駐車場に停めた車内で早い昼食後、出発です。
まず尾浦城址の見晴らし台に登ってしまい、そこからハイキングコースを上池に向かって下っていきます。上池は、隣の下池と並んだため池、というより小さな湖と呼んでいいようなところです。湿地だった庄内平野の排水と、水田の水を管理するための池だったのでしょう。今はラムサール条約指定の水鳥の保護地になっています。
カメラには、花を撮るために、18-55mmの広角ズームレンズを付けました。しかし、復路は55-250mmの望遠レンズを付けました。ある可能性を期待してのことです。
出会えた花はイチリンソウの仲間であるキクザキイチゲ、カタクリ、青いエンゴサク、そして雪割草とも呼ばれるオオミスミソウです。このミスミソウは、希少価値が高まり、盗掘があとを絶たないのだそうで、白ではなく紫やピンク、青の花が狙われるのだそうです。しかし、幸い今回はこれらの色とりどりのミスミソウにも出会うことができました。
さて復路でのこと、ひらひらと視界を横切る黄色い影が。もしやと狙っていたギフチョウです。実は往路でも1頭見かけていたのです。しかし、彼らはそう都合よくとまってはくれません。
すると、急に現れたギフチョウが、カやの木の苗のてっぺんに止まり動かなくなりました。色が鮮やかなうえ、濡れているようにも見えるのは、羽化して間もないのかもしれません。今までで最も接近して、何枚も撮ることができました。
ギフチョウは、氷河期の生き残りと言われ、1年に一度しか羽化しません。最初に雄が、続いて雌が羽化してきて、交尾して産卵。幼虫はカンアオイの葉を食べてサナギで越冬する。それを繰り返します。成虫は特にカタクリの蜜を好むようです。ですから、カタクリが咲くころはギフチョウに会えるかもしれないのです。
まあ行ってみれば、ギフチョウはスプリングエフェメラルの代表格、女王みたいなものですかね。泡から生まれたというビーナスのようにはかない、しかしこわもてのタイガーストライプで、氷河期の面影を残した毛深い女王様とでも言いましょうか?
カタクリ
キクザキイチゲ(青色)
エンゴサク
オオミスミソウ
ギフチョウ