春 秋 游 吟 17
二〇一三年清明より芒種まで
Μ・S 様に小生の絵入りTシャツ賜り二句
[清 明]
創作の衣(きぬ)たまはりて蘇芳(すはう)咲く 《蘇芳=はなずおう。ピンクの花を枝一面に付けるマメ科の落葉小高木》
創作の衣(きぬ)にいとひく花のかぜ
[穀 雨]
むらさきに立浪けぶり穀雨くる 《立浪草が百穀を潤す雨もよいに烟って:》
百穀を潤すあめに温みなし 《四十年ぶりの花冷え:》
玄鳥の未だ至らず花冷える 《玄鳥=つばめ。二十四節気・七十二候、清明の初候に「玄鳥(つばくら)至る」とあり》
さみどりを吹きぬく風やはる愁ひ
木の芽にほふ佇む肩の零れ蘂(こぼれしべ)
嫩芽(わかめ)ふく風韻に魅し深き淵
楽の韻と聴き紛ふ風や嫩芽吹く
T・G様に蕃茄賜り
那須野なる燃ゆる蕃茄(ばんか)の赫(あか)や濃し 《蕃茄=ばんか・トマト》
入木(じゅぼく)とは書のみにあらじ蒼樹(あを)へ入る 《入木=入木道とは書道。書聖・王羲之の墨は木簡の深くまで染みいっていた、その想い》
春眠とおもいしかともままならず 《春眠不覚暁・處處聴啼鳥・夜来風雨聲・花落知多少》
春眠と惰眠交ぜあひ風を聴く 《風を聴く=聴風とは小生の号》
惰眠とふ捨てきれぬ夢春遅し
晩春(はる)樹林かぜと入れば晝の月
晝の月樺(かんば)の嫩芽(わかめ)吾何處
白樺の樹皮慄(ふる)はせて南風(まぜ)の晝
樺の樹皮剝けばま皎(しろ)きをみな肌
追分の小径巻き上げ晩春埃(はるほこり)
をみな肌日ごと潤(うる)みて夏隣(なつとなり)
樹々さはぐ立夏隣の陰のあを
竹林の蒼(あを)吹き抜けて首夏のかぜ
[立 夏]
汗ばみてきっと冷たき皓(しろ)き肩
積雲の果ていづくへや空の蒼
蒼穹の誘(いざな)ひがてや果てのゆめ
M・K様にうま酒賜りて
[小 満]
賜りし美酒にいさよふ夏の夢
酔い深み嫩芽(わかめ)に泛(う)かぶ 幹の俤(かげ)
青梅(おうめ)落ち ころがり様に刻(とき)充つる
[芒 種]
麦秋や野はつるまでも風のみち
麦秋の彩(いろ)あざやかに夕陽かげ
麦秋と早苗を分かつ くに境
木天蓼(またたび)の葉白(はしろ)も鬱とあめ催ひ
木天蓼の蔓吹き上げて梅雨入(つい)り南風(はえ)
甃(しきいし)を石蕗(つわ)に占められ梅雨じめり
罌粟坊主姿態(さま)あはれなりあめの闇
盗汗(ねあせ)しとど白花散らす梅雨のあめ
命覆載(ふうさい)おのれ梅雨入(ついり)のはななるや 《覆載=天地、宇宙。覆うものと載せる物の意。》
たねつけ花に乾坤(けんこん)ありや黒き南風(はえ) 《乾坤=天地宇宙。黒き南風=黒南風、梅雨入りの頃吹く南風》
紫陽花やほとけごころの七変化
純子、幹子、直子、勢津子 夏燿ふ
夏至の陽や純子 腕(かいな)のしるきいろ
幹子語る その健気(けなげ)なる夏の風
直子握る 筆 夏彩にして 腕しろし
勢津子描く熱きおもひの肌燿(ひか)る
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