小説 レガッタ競技
どこの会社にも、様々な行事がある。三井物産には珍しい行事がある。レガッタ競技がそれである。四人乗りのボートで競技をする。ボート部が主催して戸田ボート場行なわれる。 僕は、隣のグループの田村さんに誘われて参加する事になった。僕らの他、僕と同じグループの井上さんと、海外プロジェクトの石井さんの四人で、チームの名前は田村さんが、パワーステーションズと名付けた。 他にコックスが必要だっがったが、室長が「コックスは体重が軽くなくてはダメだ」と言ったので、アシスタントの女性たちは敬遠してしまった。それで会計部の小森谷さんにお願いした。彼女は特に軽量ではなかったが、気立ての良い女性だった。 まず練習をしなければならない。五人で夕食を食べてから、戸田ボート場へ行った。競技用ボートは公園のボートとは全く違う。まずオールが長い。そしてシートがスライドする。 こぎ方は、手を伸ばして、足を曲げる、そして、足を伸ばして、手をいっぱいに引く、また、手を伸ばして、足を曲げる。このやり方を間違えると、オールが水に取られてシートに押し付けられてしまう。 これを「腹切り」という。これをやるとボートのスピードががくんと落ちてしまう。僕は練習の時、一度やってしまった。それからは注意してこぐようにした。 いよいよ大会の日がきた。よく晴れた日曜日、僕らは土手で順番がくるのをまった。、僕らの番がきた。ボートにはボート部の人が一人、安全のために乗る。僕らはボートに乗りスタートのところへゆっくりと漕いでいぅた。 四隻のボートが並び、スタートのピストルがなった。僕らは声をかけながらこいだ。キャッチオール キャッチオール と声をかけあった。僕らのボートは順調だった。中間点では二位だった。やがてゴールが近づいてきた。 ボート部の人が叫んだ「よしいいぞ、頑張れっ 頑張れっ」僕は必死になって漕いだ。キャッチオール キャッチオール しかし突然、石井さんが腹切りをやってしまった。シートから滑り落ちたのだ。ボートのスピードが落ちた。すぐに態勢を直して漕いだがゴールした時、三位だった。二位だと敗者復活戦に出られるが、三位だとこれで終わりだ。でも僕はこれで良いとおもった。僕の両手は棒の様になっていて、もう一度、レースをするのは無理だと思ったからだ。僕らは、ゆっくり漕いで、ボートを岸につけて土手に上がり、他のチームのレースを観戦した。女性チームは大変だった。もうオールを上げている人もいた。やがて表彰式あって大会は終わった。 僕らは、車でファミリーレストランへいってお茶を飲んだ。もうレースに負けた事は忘れて、にこやかに歓談した。帰りがけに石井さんが「お詫びに」と言って料金を払ってくれた。 僕は疲れたけど、いい思い出になった、と思った。
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