小説「詐欺」
ルルルルル・・・・・ 電話が鳴った。受話器をとると「日興アセットマネジメントの林と申しますが、この度、日照技研が新しい、太陽光発電の装置を開発しました。ご存知ですか」「いいえ」「これは従来の15倍の発電能力を持っていて、 月の光でも発電する、という画期的な装置です。そのため、転換社債を発行しています。社長の白川が八王子出身なので、地区限定の発売となっています。当社はこの社債を3.3倍で買いとります。電話番号を控えて下さい」僕はメモに電話番号を書いた。翌日も証券会社から電話がかかってきた。「山田証券と申しますが、日照技研が新しい太陽光発電の装置を開発しました」「その話は知っています」「そうですか、この転換社債を当社は2.2倍で買います」「わかりました」同じような電話が次々とかかってきた。そして「三菱商事アセットマネジメントの滝と申しますが、日照技研が新しい太陽光発電の装置を開発しましたので、当社は転換社債を4.2倍で買いとります。電話番号をひかてえください」僕はメモに番号を書いた。うーんと僕は思った。随分、フィーバーしているんだな。面白いかもしれない。僕は130万円の現金をを持っていた。やがて、日照技研からパンフレットが送られてきた。立派なものだった。社長の挨拶状や会社案内が入っていた。僕は日照技研聞いてみようかな、と思った。そのうち、テレビ東京や、TBSや、日経ビジネス、週刊ダイヤモンドなどのメディアも取材と称する電話をかけてきた。僕は日照技研に電話をした。「もしもし」「はい、日照技研ですが」「転換社債の件ですが、130万円分買いたいのですが」「当社は30口、300万円、以下ではお売りしません」「えっ、そうでか。わかりました」僕は驚いた。随分、強気だな。そうしたら一番倍率の高い三菱アセットに聞いてみようと思った。それで三菱アセットに電話した。「もしもし、滝さんお願いします」「お待ち下さい」 そして「はい、滝ですが」「日照技研は30口以下は売らないそうでが」「あっそうでか、それでは当社で検討させて頂きます」「はい、わかりました」僕は電話切った。 そして、一週間後電話がかかってきた。「三菱アセットマネジメントの滝ですが、他の50口以上の方と抱き合わせで申し込みます。日照技研は大口優先ですから」「わかりました」更に一週間後電話がかかってきた。 「申し込みますので、これからお金を預かりに行きます。領収書は郵送します」「わかりました」僕はお金を用意した。そして、若い男の人が家にやってきた。「滝課長の使いの者です。お金を頂きにきました」 僕はお金を渡した。しかし、いつまでたっても、領収書が来ない。それで三菱アセットに電話した。だが電話は通じない。それでおかしいと思い、104で三菱アセットの電話番号を聞き、電話した。 「もしもし、日照技研の転換社債の件ですが」「いえ、当社は個人の取引はしておりません」「えっそうなんですか」詐欺だっ 僕は警察に電話した。「もしもし、詐欺です」「詐欺ですかっ」僕は事の次第を話した。「わかりました。すぐ警察官を派遣します。同じ事を聞かれると思いますが、我慢してして下さい」 警察官が3人、家に来た。「奴らは、頭がいいですからね。巧妙にやりますよ。すぐ刑事がきます」やがて刑事が2人やってきた。パンフレットの写真をとり「身長はどの位でしたか」「170センチ位だと思われます」 「ネクタイの色は何色でしたか」「そう、分かりません」「どちらの方へ行きましたか」「ちょxと、わかりません」「奴らは取った金はすぐ使ってしまいますからね。お金が戻るかどうか」と言って帰っていった。 僕はテレビ東京に電話した。視聴者センターにつながった。「詐欺です」「えっはいっお話し下さい」僕は話し始めた。彼女はキーを叩いている。物凄い早さでキーを打っている。キーを打つ音が受話器きから聞こえてくる。僕は話し続けた。話し終わると「名前は」「いいえ、個人情報保護法でお名前を聞くことは出来ません」と言った。 次に東京都の消費者センターに電話した。「詐欺です」「はい、どうぞお話し下さい」彼女はゆっくりしてメモを取りながらきいている。そして「すぐ金融問題担当者から電話がいきます」と言った。 すぐに金融担当から電話がかかってきた。「債券は送ってきましたか」「いいえ」「お金は戻ってきません。債券は証券会社から買い、お金は銀行に預けて下さい」「こういう話しは多いのですか」「いっぱいです」 奴らは何の証拠も残さないで、金を奪った。でも奴らの魂は、地獄の炎で焼かれるだろう。そう思うと少し気が楽になった。
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