|
京洛西、西行がみ寺
くゎんのんの移り香たちぬ春の陽の 静寂(しじま)に揺れしあかきくちびる 春かすみ分けて訪(おとの)ふ洛西(らくさい)に 花ともにゐます黝(くろ)きくゎんのん 《当寺は別称「花の寺」と言われる。京・洛西在、勝持寺。》 白毫(びゃくがう)と見紛ふ露のひかりあり 西行く寺の枝垂る蕾に 《白毫=佛の眉間にある宝玉。元は釈迦族の眉間にあった毛の聚と言われる。》 洛さいのはなのみてらのはなしだれ 含めるつゆにはるきたるらし 《洛さい、洛西=京都の西郊外、西山。》 西行の栖(すみか)なりしとはなてらの 蕾の露にやどる春の陽 うたひとの玄(くろ)きみ像に春こもり 朧ろ霞すめる洛西の寺 京 清水寺 90年11月 忘れめや柞(ははそ)おちばを踏みしだき すずろにありくきよみづのひと 《A・0さんと清水寺散策柞=くぬぎ、みずならの古名。》 黄もみじを映して明(あ)かき夕陽かげ 夢さかりなるきよみづのひと 清水(きよみづ)をあつめてそそ洒ぐ瀧の音を 紅葉踏みしめ彼のひとと聴く 《瀧=清水寺・音羽の瀧。》 ひととせを まつほに渡る松風の 音に想ひ出づるきよみづのひと 《まつほ、松風は「待つ」をかけ、あなたへお送りした拙歌のかへしをお待ちしてゐました…の意。》 たまはれし色紙が歌のまろやかに ひと日ひととせ幻のなか 秋篠寺 あきしのの冥(くら)きみ堂を出で見れば 瓦染めたり落日のあ 朱け 小説「蜃気楼」挿入歌 おもひわびそなたのかたを眺むれば 滾(たぎ)りて暮るる入相(いりあひ)の空 懺悔 梅雨霽(は)れてこぼれおちたる凌霄花(のふぜん)に 懺悔の三っつ 四つ二つ見つ 中学同期会 うたた寝の夢枕にぞ霞たつ わが春愁のむらさきの彩(いろ) 信濃追分シャーロックホームズ像除幕式に友人の妻が踊るパントマイムに寄せて 88・10・9 高原(たかはら)の 舊(ふる)き聚落(しふらく) 開かれし 祝祭のとき刻 代赭(たいしゃ)なす ホムズがもとに 真白なる ピエロの愁い 《代赭=茶色味の橙色 、褐鉄鉱の色。》 言葉無き 動きの汝れは 出口無き 世紀の末(うれ)を かたらひそ その高原に 風しろく 樹々紅(くれない)す 小布施に北斎を訪ふ みすずかる しなのの北の たひらかな 小布施の果てに 三ツ山の 蒼き連なり 灼熱の 陽は燦々と わがはだへ あつきに喘ぎ 友と訪ふ 北斎が寺 六十路もて おもひはるけし 《みすずかる=信濃の枕言葉、すずたけのこと。山地に自生する笹の一種。三ツ山=頚城(くびき)三山、妙高・黒姫・飯縄。》 小布施乙女娘 積雲の連綿たりかへりみすれば 小布施をとめご隠さばやあつき情(こころ)を 《 註 「をとめ」若き娘を古語では「をみな」、「おみな」は嫗で数十年前の、「元をみな」のこと。》 風に… あなたは風を追い 白樺に身をよせて その囁きを聴かうとした しかし風はあなたの胸にとどまりはしなかった 閲覧回数: 1838
|