世耕弘成経済産業大臣殿 2016年8月24日
残暑お見舞い申し上げます。 失礼の段お許し願います。 最近福島を訪問された際、日本が抱えた最重要課題は福島事故への対応であるとご発言されたと報じられました。ご見識に心から敬意を表します。
放射能汚染は東京の一部に到達しております。五輪返上を早急に決定し、福島事故の収束に全力投球して、これ以上の放射能汚染の拡大を防ぎ、東京すら住めなくなる事態の発生を防ぐことが最重要、緊急課題の筈です。 2011年3月11日に発令された原子力緊急事態宣言は、事故から5年以上たった今も解除されていません。この緊急事態宣言の下、被害を受け続けている人々の苦難を放置しながらの状況下での東京五輪開催は不道徳であり、問題外であると確信いたします。
東京五輪返上の賛同者は私の周辺だけでも激増しております。 凍土壁建設の挫折は「under control」を否定するものであり、東京五輪返上は現実味を帯びるに至ったとの新聞記事(7月28日付「日刊ゲンダイ」)も見られました。
放射能汚染の拡大を止められない状況下での東京五輪は論外で無責任、不道徳そのものとの見方が国際的に高まりつつあります。6月14日の中国外務省報道 官による対日批判発言はその一例です。ご高承の通り“Under control”発言は世界の嘲笑の的になっており、再稼働、核技術の輸出は非難の的になっております。日本国家の危機を電力会社の経営危機として対処し ている現状は440基余の原発の存在を容認する世界の主流と軌を一にするものであり最早限界に達しております。
この度の英国のEU離脱の意義を敢えて総括すれば、「病めるエリート・支配層が舵取る世界の主流に変化の種を植えつけた」といえると思われます。 2002年拙著「原子力と日本病」を発刊し、倫理観、責任感及び正義感の“三カン欠如”の日本病の存在を指摘しましたが、このたび同様の病気が世界の主流 に広がっていることを指摘するに至りました。脱原発の実現にはこのような主流の変化が不可欠といえます。
変化の兆候が早くも表面化し始めました。 Christine Lagarde IMF専務理事によるギリシャを毎回オリンピックの主催国とするようにとの発言に対しては、ハーヴァード大卒の米国の友人(ペリー提督の末裔)から、経済 的理由からではなく、五輪本来の精神に立ち戻らせる立場からの支持が早速寄せられました。東京五輪は「嘘の宣言」に立脚し、倫理を欠くものです。五輪の生 みの親のクーベルタンは「倫理の基本的諸原則の尊重」を求めました。五輪返上と五輪改革の必要性は最早明白です。
8人の女性閣僚を任命した英国のメイ首相が仏、中両国の支援を得て建設予定の原発に待ったをかけたことは、BREXITが世界の潮流の主流の変化の種を 植えたとの見解に沿う変化の具体的兆候であり、指摘されている原子力産業の「メルトダウン」にも影響を与えうるものといえます。また、経済よりも生命を重 視する女性ならではのこの決断は、力と支配に立脚する父性文明から和と連帯に立脚する母性文明への転換の兆候とも見なし得ると思われます。
英国のEU離脱が国際金融大混乱を招くとみる見解が強まっております。国際金融は世界の主流の中心的存在であることに鑑みれば、主流の変化の兆候は増えていく感があります。
この度、伊方原発が国民及び住民の反対を無視して再稼働されたことに対して、菅直人元総理が関係者責任者の頭脳がメルトダウンを起こしていると厳しく非難したことが報じられております。正にそのとおりです。
「安全神話」という大嘘に立脚する日本の原発は再稼働どころか存在も否定されなければならないものです。「住民の避難」を考えることは本来許されてはては ならない事故の発生を想定するという根本的過ちを犯すことになります。このような否定出来ない指摘は原子力独裁に無視されるだけです。
天地の摂理は不道徳の永続を許さないという歴史の教えが日本国民に希望を与えております。
ご理解とご支援をお願い申し上げます。 貴大臣のご活躍とご発展をお祈り申し上げます。
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