『じぶんで!』&『やって!』の時代…『自分でやって』の一つ前の時代
『じぶんで!』&『やって!』の時代…『自分でやって』の一つ前の時代
保育園の中にある一時保育室からのレポートです。 保育園の1歳児クラスの子どもと2歳児クラスの子どもに該当する子供たちが混在しています。1~2歳児の縦割り仲間です。 一日当たりの保育室の定員は10名が上限です。 曜日によって登園するメンバーが異なります。 その分少々ややこしい面もありますが一方極めて面白い保育です。
満2歳から3歳にかけて、ピンポイントで独力のみでやりたがり、なまじの大人の手助けや、助言を強烈に拒否し、時には自分の思いや心づもりが通らないからとか、段取りが気に召さないからとかで、泣き叫び、怒りまくる、その勢いたるや銀河の彼方まで届けとばかりの激しさです。何せ自己中心時代です。広い銀河のど真ん中に自分がいて世界が周囲にあるという「天動説」の世界観です。 一人で怒っているときにはまだよいのですが、それが周辺への八つ当たりも混在して表出されると、実害も派生してきますから対応の適切さがその子に付き合う大人たちに求められてきます。 ここは保育園の中にある一時保育室。毎日通級してくる子たちではありませんのでその子の育ち加減の近々のデータ不足の中で保育が展開されます。 前回までのその子の印象と今日の生の姿のそれぞれの断片をつなぎ合わせ推測して、まさに想像力を駆使して対応していく保育です。
こんがらかった紐の束を力技でなく根気よく解きほぐしたり、初手から掛け違えているボタンをさりげなく外し、ボタンを本来の位置にかけ直す手伝いや、その子の思いを相手の子に伝わるように言葉を添えたり、相手の言い分を聞き留めその子に橋渡ししたり…。
『今すぐ欲しい・使いたい』が即叶わぬ状況はいくらでも発生して、時には、「売り切れです」の現状をまず気づかせ、双方の気持ちを汲みつつ、両者に展望を示します。 「あとでおわったらかしてねっていおうね」とか「おわったからはいどうぞ」というちょっと先の見通しをその子のイメージの大地に植樹します。 そして「はいどうぞ」と譲ってもらったら「ありがとう」の言葉と気持ちを相手に添えることを丁寧に繰り返しあたりまえの生活感覚の一部として定着していけるように援助していきます。「はいどうぞ」と譲ってあげたら「わっ、素敵」「かっこいい」とことばを添えます。ただし上っ面だけの形でのやり取りとならぬよう、本気の処でそれぞれの満足や納得を見極めます。何故なら子どもたちは子どもたちなりに相手と自分との力量さや我の強さ加減を肌身で読み取っているものだからです。
この時代は『自分で(やりたい)』の盛りでありながらその一方、平素自力で難なくできていることをその時に限って『やって』とか『できない』とかと甘えたり頼ってきたりする面も同時進行で混在しています。この両極の振れ幅の中で駄々をこねながら心の奥深いところでささやかながら着実に育ちつつある感性があります。
やがて経験智と経験量で習熟すると『自分で』&『やって』の時代は、その次の段階に入り『自分でやって』と挑ませたり、時には厳しく突っぱねたりの叱咤激励の時代に移行していきます。着実な力の育ちを見守って手間暇のかかる時代の子育てならではの貴重な時間を味わって(面白がって)います。
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