知人より下記のメールが寄せられました。
東京電力で賠償を担当していた元東京電力社員の一井唯史さんから、緊急連絡です。
帰宅困難区域の森林で火災 引用元:一井唯史さんからのメール
4月29日午後、福島原発事故の帰宅困難区域の森林で火災が起き、強風により山林の7万平方メートル以上が延焼し、燃えています。ほとんどの方が福島で起きたこと、対岸の火事と思っているようですが、風により福島原発事故爆発時は関東甲信越、静岡、愛知の東側まで飛散しています。福島だけが汚染されたわけではないのです。今もなお火災は継続しており、30日の消火活動は日没とともに打ち切られ、5月1日午前5時過ぎから、再び、ヘリコプターで消火が行われる予定です。」 1日、午後6時のNHKニュースによれば自衛隊や消防隊により消火活動が続けられているが火災は未だ鎮火に至っておりません。 放射線量の変化についてはネットでは次の指摘が見られます。(saigaijyouhou.com/blog-entry-16597.html ) 「5月1日昼ごろから茨城県や千葉県の太平洋側で放射線量がやや増加していることが分かりました。全国放射能速報地図によると、茨城県のひたちなか市で線量が毎時0.079マイクロシーベルトに上昇し、千葉県の印西市(いんざいし)でも線量が毎時0.076マイクロシーベルトに増加したとのことです。 いずれも過去30日間の線量は毎時0.050マイクロシーベルト程度で、平時よりも1.2倍ほどに微増しています。線量の上昇幅は小幅なので、直ちに大きな影響が出ることはありません。 福島県では先日に帰宅困難区域で大きな森林火災が発生しており、その影響で放射線量がやや増えたとも考えられます。」 |
他方、1日、東北ヘルプ事務局長の川上直哉氏から寄せられたメールを下記お届け致します。
山火事のニュースを見て 引用元:川上直哉氏からのメール
浪江町での山火事のニュースを見て、これまでの学びを整理します。 1.東京大学の調査報告書「福島第一原子力発電所事故から5年を経過して農業面で何が分かってきたのか」(BUNSEKI KAGAKU、 Vol.66、 No. 4、 pp. 217-222、 2017年 http://xfs.jp/VUIe9 )によると、福島第一原発周辺の野生化したヤギと豚(あるいはイノブタ)を比較した場合、「実際に調べたところ、ヤギとは異なり体内の放射性セシウム濃度が高いことがわかった」という。野生化したヤギは「放射線量が高いところで活動していたにもかかわらず、体内の放射性物質の濃度は非常に低かった」のに。 2.これは結局、土壌汚染が生物の内部被曝に直結していることを示している。つまり、植物などを介して「間接的に」土壌汚染が生物の内部被曝に至る、ということではなく(あまりなく) 、直接、汚染土壌を摂取(あるいは吸引)することで、生物は内部被曝する、ということを示している。 3.報告書「放射性微粒子の謎に迫る」(『ぶんせき』2016年12月、529-530ページ、日本分析化学会発行 http://xfs.jp/TK1US )は、これまでの研究を整理していて便利である。それによると、福島第一原子力発電所事故の結果、ウラン(何度もα線・β線を放射する=ごく近傍の細胞はがん化するまでもなく細胞死に至る)を含むガラス化した(水にはほぼ解けない)放射性微粒子が飛散していることが、すでにわかっている。そのガラス状物質は、原子炉内で生成された可能性が高く、その大きさは最大でも6.4マイクロメートルであった。つまり、PM 2.5と呼ばれる微粒子対策を、ここで考えなければならなくなる(通常のいわゆる「マスク」では、吸入を完全に防ぐことができない)。 4.上記「放射性微粒子の謎に迫る」は、さらに、上記放射性微粒子と、チェルノブイリ事故の際の「ホットパーティクル」との比較結果も整理している。それによると、「福島原発事故由来の放射性微粒子のほうが、より多くのCsを凝縮した粒子である」という。福島事故は、チェルノブイリ事故とは違う、と巷間語られる。そのとおり。もっと深刻かもしれない。 5.上記「放射性微粒子の謎に迫る」はまた、汚染土壌の研究結果もまとめている。それによると、上記微粒子の他に、さらに「可溶性」「水溶性」の放射性物質も飛散したことがわかっているという。そういえば、最初に紹介した東京大学の調査においても、樹木の表面に付着したはずの放射性物質が、幹内部への水の動きに乗って、幹内部への移動した可能性が高い、と指摘していた。 6.ただし、上記東京大学の調査によると、土壌に吸着したセシウムは、「最初の3か月で土壌中の深度別放射性セシウムプロファイルは2cm下がったものの、次の3か月ではその間に雨量が3倍に増加したにもかかわらず、5.6mmとなり、次第に動かなくなった」という。そして「現在では年間1-2mmほど」しか、地下へ浸出(移動)しないこともわかっている。 7.これだけのことがわかっている2017年4月末に、強制避難区域であった山林(原発事故現場から20キロ内陸の十万山)で、大規模な山火事が起こってしまった。火はまだ、消し止められずにいる、らしい。山林の樹皮には、今なお大量に、福島事故由来の放射性物質が付着していたであろうに。それは灰となり、上昇気流に乗って舞い上がっている、かもしれない。そして、地表3cm程度のところにまだ堆積している放射性物質は、焼け野原となったあとに吹きすさぶ風に乗って、樹木から灰になって降下した放射性物質もろともに、容易に舞い上がり飛散することだろう。
整理は、以上です。 土壌汚染をひたすら無視してきた世間は、「見たくないもの」を今見なければならなくなっている。 怒るな。諦めるな。怯えるな。阿るな。…… そう自分に言い聞かせている朝です。 |
村田光平
(元駐スイス大使)