お話森の山小屋で (第8稿) ~1/4~
①あいことば むかしむかし、ある国のかたすみに小さな村がありました。 その村はどこにでもあるごくごくふつうの村で、 村にはどこにでもいるごくごくふつうの子ども達が、 ごくごくふつうの暮らしをしていました。 さてその村のとなりに大きな森がありました。 その森は不思議の森でした。 その森のまん中には小高い丘があり、 丘のてっぺんには広場がひとつありました。 その広場は不思議の広場でした。 その広場のまん中に山小屋が一軒ありました。 その山小屋は不思議の山小屋でした。 その山小屋には小さなドアがありました。 そのドアには看板がかかっていました。 その看板には不思議の文字でこう書かれていました。 「だれでもどうぞ。いつでもどうぞ。 ノックを3回してください。ドアが開きます。」 ドアの奥には小さな部屋がひとつありました。 その小さな部屋は不思議の部屋でした。 部屋の中では不思議の時間が流れていました。 部屋の扉には小さな貼り紙が不思議のピンでとめられていました。 その貼り紙には不思議の文字で「合言葉は『入れて』です。 『いいよ』と返事が聞こえたら扉を開けてください。」 と、こう書かれてありました。 さあ扉を開けたらどんな楽しいお話が待っているでしょう。
② 扉をあけた子どもたち
森には素敵なこと楽しいことがいっぱいありました。 ある日、村の子ども達が8人、その森に出かけて行きました。 森の中には不思議の小道がありました。 子供たちがためらいもせずどんどん歩いて行くと 歩いていきたいその先につぎからつぎへと道ができました。 なぜってそれは不思議の小道だったからです。 その小道をどんどん行くと小高い丘が見えました。 その丘のてっぺんまで登っていくと見晴らしの良い広場に出ました。 その広場の真ん中に山小屋が一軒見えました。 子ども達は『よーい、ドン』と広場をまっすぐに突っ切りました。 息がハアハアする前にもう山小屋に到着しました。 なぜってそれは不思議の広場だったからです。 山小屋にはドアがあり看板が揺れて掛かっていました。 なぜ看板が揺れていたかというと 子ども達がみんな元気に走って来たからです。 大きな子どもも小さな子どもも みんな一緒に声をそろえて看板の文字を読みました。 なぜ読めたのかというとその文字は不思議の文字だったからです。 「だれでもどうぞ。いつでもどうぞ。 ノックを3回してください。ドアが開きます。」 子ども達はドアをノックしました。 『トントントン』 シャラリラ シャラリロ シャラランラン と鳴りながらドアが楽し気に開きました。 子ども達がドアの中に入っていくと 小さな部屋が一つありました。 部屋の扉には小さな貼り紙がありました。 その貼り紙は不思議のピンでとめられていました。 不思議のピンがプルプルっと小さくゆれながら言いました。 「あいことばをどうぞ」 子ども達は声をそろえて言いました。 「い・れ・て」 すると部屋の中から 「い・い・よ」 と返事が返ってきました。 子ども達はわくわくしながら扉を開けました。
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