カイロ団長・考 その3 殿様蛙の営業活動
めでたく30匹の雨蛙を自分の『家来』にすることができ、カイロ団を結成しカイロ団長になれたものの、彼には経営センスがなかったですね。 『カイロ団』って平たく言えば何屋さんだったのでしょうか? ゼネコン? 便利屋? それとも…造園業? 看板くらいは作ったでしょうが、カイロ団という存在を世の中に宣伝しませんから社会的認知もされていません。知名度の「ち」さえありません。 当然どこからも仕事の依頼が来ません。 カイロ団の営業品目っていったい何だったのでしょうか?彼は利益を上げてお金儲けがしたかったのでしょうか?恐らく殿様蛙自身にも明確なものがなかったから宣伝活動の発想さえなかったのです。 彼にあったものは、『カイロ団という組織の長として家来に対し専制君主としてふるまう事への執着』です。これが満たされればそれでよかったのでしょう。
(前略)「さっぱり誰も仕事を頼みに来んな。どうもこう仕事がなくちゃ、お前たちを養っておいても仕方ない。俺もとうとう飛んだことになったよ。それにつけても仕事のない時に、忙しい時の支度をしておくことが、最も必要だ。つまりその仕事の材料を、こんな時に集めて置かないといかんな。(後略)・・・」 と、この発想と展開まではなかなか良かったのですが、その後が全くもっていただけません。 仕事が来ないからといって雨蛙たちに無茶苦茶な命令を言いつけます。 ・立派な木を1000本集めてこい… ・花畑へ出ていって花の種を拾ってくるんだ。一人が万粒ずつ拾って来い… ・今日は石を一人につき900貫ずつ運んで来い… 「命令」の様式美のみにとらわれた実にハチャメチャな命令の数々。
「立派な木を1000本」と言いつけられて雨蛙たちは (前略)一生懸命いい木を探しましたが、大体もう前々から探す位捜してしまっていたのですからいくらそこらをみんながひょいひょい駆け回っても、夕方までにたった9本しか見つかりませんでした。(後略) ヘトヘトになり消沈している雨蛙たちのところにアリンコが通りかかり煙のようなカビの木を持っていったらと提案してくれます。 命令を下した殿様蛙は『1000本』という数に執着するばかりで『煙のようなカビの木』であろうがどんな木であろうが1000本集められてくると (前略)すると団長は大機嫌です。「ふんふん。よし、よし。さあ、みんな舶来ウイスキーをいっぱいずつ飲んで休むんだよ。」(後略)
いかに自分の営業ビジョンが欠落していたかがわかります。
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