超満員バス乗車
満員電車に乗っての通勤は昨年4月からですので、あらかた慣れっこになっています。6/08の朝のことです。私が利用したい電車が発車するほんの2~3分前に行先の一つ隣の駅で人身事故が発生した為 「現在電車は上下線とも不通となっております。復旧の見通しは全く立っておりません。」 という放送が駅構内に繰り返しくりかえし流れています。 私には事態の状況がよく呑み込めていないものですからとりあえず改札をタッチしてプラットホームへ降りていこうとしましたら階段の下からおびただしい人々が出口に向かって昇ってきます。臨時停車を余儀なくされていた急行電車の乗客のほぼ全員が車両から降り、この駅の改札口へと移動を始めたのです。 私もこの人の流れに混じって改札口へと向かうことに方向転換しました。 改札口ではバスによる振替輸送と他の会社の路線での振替輸送をして対応していること、 振替輸送の行き先がどこでバス乗り場までの行き方が具体的に説明されています。 アナウンスに従って0番バス乗り場と5番乗り場を目指し歩いているうちに、これはむしろ1番乗り場からW駅行きのバスに乗ることが私の通勤にとっては最良の選択だと閃きました。 幸い1番乗り場には既にバスが停車しており、乗り口ギリギリに人が込み合って乗っています。 ひるむことなく「ごめんなさい」と体をはすにして割り込みました。 私が乗り込んだのを見てバスの外にたたずみこれでは乗車は無理かと半ば諦めていた数人の老若男女が私の後に続きます。結構詰め合えるものなのです。 日々の満員電車通勤で身も心も鍛えてあるのが役立ちました。 やがてバスの乗降ドアが閉まり、バスは発車しました。 電車が上下線ともに不通という緊急事態の影響を受けた沢山の人々の中にはこの路線のバスもこの会社のバスに乗るのも初めてという人がほとんど。終点の駅まで移動するという振替輸送乗客の表情は不安と困惑が滲んでいます。不安の色は隠せません。 緊急事態という非日常の光景です。私たちは今みんなしてそのさなかにいます。 一方このバス路線を日常生活の中で当たり前に利用している乗客も同乗しています。が、やはり度を越した車内の超混雑ぶりに困惑気味です。 途中のバス停から乗る人、降りようとする人、「困ったときはお互いさま」でちょっとずつの譲り合い。 このバスは中扉から乗って車内を通って前扉から降りるシステムのワンマンバスです。 病院に通院する人、お墓参りの人が一人三人と降りていきます。一人目の時はかなり窮屈に出口まで歩いた混雑の車内も三人の時には結構歩きやすい「花道」になっていました。 お互いが譲り合って協力体制が濃くなるにつけ車内には何となく共同体のような雰囲気が醸し出されてきました。 また一人の男の人が降りようと降車ボタンを押しました。 この人は乗り口ギリギリにへばりついて乗っていましたし背負っている大きなカバンは混雑の車内を通り抜けるにはかなり困難の極みです。 中ドアと前ドアが開きました。 彼は中扉から歩道に出ました。 私は一瞬無賃乗車のせこい人なのかもと思いましたが、彼はバスの側面を前方に早歩きして開いている前扉から運転席の料金器にパスをタッチし、そして再び歩道を足早に歩いていきました。 彼の機転に「わ、あの人賢い!軟らかあたま」と感動しつつも、一瞬でも彼のことをせこい人間なのかもと疑いを寄せた自分を恥じました。 やがて終点のW駅への最寄りのバス停に着き、皆それぞれに、一安心という表情でバスを降りていきました。日本人、まだまだ捨てたもんじゃないです。
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