東北HELP 事務局長の川上直哉氏から頂いた重要情報を転送させていただきます。
村田光平(元駐スイス大使)
すでに皆様ご承知かもしれませんが、原発事故について、新しい情報が出てまいりました。
http://www.tus.ac.jp/today/archive/201705260003.html(新聞記事は、下記に添付)
ご承知の通り、かつてチェルノブイリの時に「ホットパーティクル」と呼ばれたものがございました。それときわめてよく似た様相を示す「セシウムボール」が、関東の広範囲に見つかったという情報です。
「ホットパーティクル」についていえば、吸引その他によるその内部被ばくによって、それが付着した細胞およびその近傍の細胞は「がん化するまでもなく細胞死する」ことが政府系の論文によっても、示されていました。
残念ながら、今回発表されたかぎりにおいては、今回の発見の詳細がよくわかりません。特に、関東のどこに、その放射性微粒子が広がったのか、わかりませんでした。私の調査力不足です。
過日は、歴史家の加藤陽子氏が、現在の「東京オリンピック実現」は
かつての「満州国の夢」と同定できると、朝日新聞に語っていました。(2017年6月6日付)
今週土曜日には、TBSラジオの昼のワイド番組で、「東京五輪は返上すべきか」をテーマとする企画が放送されます。
https://www.tbsradio.jp/151929これまで世間が、ひたすらに矮小化して過小評価してきた現実に少しずつ、向き合う人が増えてきたように思われます。
以上、ご連絡をいたしました。
川上直哉
セシウムの粒、事故知る鍵 炉心溶融で生成?影響未知 引用元:日本経済新聞 2017/6/11
東京電力福島第1原子力発電所事故の際、放射性セシウムを含む未知の微粒子(セシウムボール)が原子炉から放出され、遠く関東地方まで飛んできたことが最近の研究で分かった。従来知られてきたセシウム放出物とは体内に取り込んだ場合の健康への影響も異なると考えられる。事故の進展を推測する手がかりとしても注目される。
セシウムボールを最初に見つけたのは茨城県つくば市にある気象研究所の研究チームだ。大気汚染の観測装置のフィルターから直径2.6マイクロ(マイクロは百万分の1)メートルのセシウムを含む球形粒子を発見した。装置に粒子が採取されたのは2011年3月14日から15日の間。福島第1原発で炉心溶融(メルトダウン)が相次いで起きていたと考えられているころだ。
研究チームが解析を終え発表したのは13年夏だ。この発見は、事故で広がった放射性物質の影響を調べている科学者らの間に懸念を呼び起こした。セシウムボールは水に溶けない微粒子だったからだ。
今年5月には東京理科大学などが、セシウムボールが関東地方の広い範囲に飛んできたことを学会で発表した。
炉心が溶融した原子炉から出る放射性セシウムは、大気中の成分と結合し化合物(水酸化物や硫化物など)の微粒子となり広がる。これらは可溶性で地面に落ちるとセシウムは水に溶けた後、土壌粒子と固く結びつく。表土をはがせばセシウムは除去できる。体に取り込んだ場合、1~3カ月程度で半分が体外に排出される。セシウムを含む食物をとらないよう心がければ内部被曝(ひばく)は減らせる。
一方、セシウムボールは地面に落ちてもセシウムは溶け出さず、土壌に固定されない。微粒子は再飛散の恐れがある。体内に入ると肺の中などに長くとどまりやすい。大きさが大気汚染の原因となる微小粒子状物質PM2.5と同程度で、吸い込むと出にくい。森口祐一東京大学教授は「健康影響を知るうえで従来の考え方が適用できない」と話す。
現在、複数のチームが謎の粒子を追いかけている。小暮敏博東大教授らはセシウムボールの構造や成分を詳しく調べた。ケイ酸塩ガラス(窓ガラスの主要成分)の中にセシウムや鉄、亜鉛などが閉じ込められていた。原発に近い場所では10マイクロメートルを超える大きさで丸くないものも見つかった。
健康影響を把握するうえで何より知りたいのは、放出量と放出のタイミングだ。東大や東京理科大などの研究者らは東北、関東地方にある大気中の浮遊粉じん観測装置のフィルターを集めて調べ、セシウムボールがいつ、どれくらい飛んでいたかを割り出そうとしている。
12日ころに北に流れた1回目のプルーム(放射性物質を運んだ空気の流れ)ではセシウムボールは見つからず、15日に関東に到達したプルームに多く含まれていたことがこれまでに判明。九州大学などの分析では、15日に東京都内でとらえた放射性セシウムの8~9割が不溶性だった。つくば市より南の関東地方南部でも15日に飛来したと考えられるセシウムボールが見つかった。
中島映至東大名誉教授らは福島第1原発からは9回のプルームが出たと推測する。このうち福島第1原発2号機から出たと考えられる2回目のプルームが15日に関東に来た。2号機は14日夜から冷却ができなくなり15日にかけて炉心溶融が進んだと考えられている。粒子が2号機のものだということは放射性物質の構成比から推定できる。
2号機では今年2月、東京電力などが格納容器内にロボットを入れたところ、原子炉本体(圧力容器)の外側で非常に高い放射線を検出した。その正体は不明だが、炉心溶融で発生した様々な放射性物質が相当な量、原子炉の外側に広がることを示唆する。
セシウムボールの主成分のケイ素はコンクリートや断熱材に含まれる。溶けた核燃料がコンクリートなどを蒸発させ、それが大気中で急冷しガラス状に固まる際にセシウムなどを取り込んだというシナリオが想定されている。
東京理科大チームは、直径約1マイクロメートルのセシウムボール1個に含まれる放射性セシウムの量は1ベクレル以下と報告する。飛散地域の空間放射線量を上げるほどではなく外部被曝を心配する必要は小さい。ただ帰宅困難地域の住宅内のホコリの中にセシウムボールがあったと東大が報告している。掃除や除染のために立ち入る際には吸い込まないようマスク着用などの注意が必須だ。
事故の進展過程を知り、健康影響の全体像を把握するためにはセシウムボールについてさらに詳しい研究が必要だ。 |