お送りした別添論文は内外で注目されておりますが、入口紀男先生から頂いた大変示唆に富む補足説明をお届け致します。
(その1)
<「周産期死亡」(perinatal mortality)とは、妊娠22週以後の死産と生後1週未満の新生児死亡を合わせたもの。
高放射能汚染6県(岩手・宮城・福島・茨城・栃木・群馬)では「15.6パーセント」高くなり(図3ー4ページ右コラムの一番下)、中程度汚染3県(東京・千葉・埼玉)でも「6.8パーセント」高くなった(図4―5ページ左コラムの一番上)ようです。
絶滅危惧種日本人としましてもゆゆしき数字です。
データでは放射能汚染の影響が10か月後に現れていることから、「受精卵」の段階が特に危ないようです。細胞分裂を始める段階で、大切なDNAの主鎖・側鎖が放射線で致命的な損傷を受けてしまうのでしょう。
また、汚染地域での妊娠22週未満の人工中絶率は、データにありませんが、おそらく高くなっているでしょう。
なお、この論文では、上記6県(岩手・宮城・福島・茨城・栃木・群馬)を「ひとくくり」にしたり、関東3県(東京・千葉・埼玉)を「中程度汚染」(Moderatelycontaminated)として「ひとくくり」にするなど、科学(医学)論文として地域のとらえ方にやや「おおざっぱさ」も感じられますが、それはそれとして今後の検証と歴史的評価にさらされるでしょう。
それでも、この論文は現在わかる範囲で事実を伝えるものとして一定の価値が感じられます。>
(その2)
「とても重要な論文です。
この論文の第一著者はドイツの研究者ですね。
日本の研究者だけからは、このような論文は(上からの空気を肌で感じて)なかなか出て来ないような気がいたします。
『Medicine』誌はインパクトファクター(論文が1年にどれくらい頻繁に引用されたかを平均値で示す尺度)が「1.8」あり、一流の学術誌と言えます。
ただ私は、この論文を根拠に福島など高汚染6県と東京など中汚染3県を峻別したり差別を助長したりすることのないように致したいと気を遣っております。
(中略)水俣はかつて周囲から峻別されかつ差別されました。生徒が県外に試合に行くと「水俣病が来た」といわれ、嫁は水俣に来ず、水俣の娘は嫁に行けませんでした。
私は、その大規模な社会現象がいま東北を中心に起こりつつあるのではないかとも心配致しております。」
村田光平
(元駐スイス大使)