『日ざかり村に戦争がくる』
フアン・ファリアス 作 宇野 和美 訳 堀越 千秋 画 福音館書店 刊 日ざかり村では、戦争は、空腹と、若者や男たちがいないさびしさを人々に味わわせただけだった。いいほうと悪いほう、どちらの側についたかは知らないが、ある者は戦場に出て、ある者は山にこもった。
戦争は寒い冬の、わびしい風のように、日ざかり村じゅうの通りを吹きぬけた。
だまりこくった鐘に、
鍋でわきたつあぶくの中に、
祝いごとをなくした日常の中に、
戦争は見てとれた。
子どもたちが毎日、お城の襲撃ごっこをしたり、
腕を広げて、町を爆撃する戦闘機のふりをしたり、
海も船も見たこともないのに、ドン・ハコボのラジオで聞いた最新の戦勝のニュースにならって、しめった緑の原っぱの海で、船をしずめるふりをしたりする中に。
日ざかり村で戦争は、長く、ときにはりつめた待ちぼうけでしかなかった。
ところが、聖週間の木曜日の明け方、兵士たちが再び村にやってきた。剣や銃を持って馬に乗った兵士が十二人、不機嫌な将校にしたがえられてやってきた。