中央線の武蔵境で知人との打ち合わせがあり、天気にも誘われクロスバイクで出かけることにしました。出発前、グーグルマップで念入りにルートをチェック、今のグーグルマップには全コースの高低差も表示されるので、できるだけ坂道の少ない平坦なコースを選択し片道20K弱の行程。
行きは快調に飛ばし丁度1時間、平均速度19.41Km/hで走破。2時間の打ち合わせが終わり16時に帰途につく、行きに通ったルートなので迷うこともなく順調に快走。3か月前まで通い慣れた尻手黒川線の川崎インターまで着た途端、プツリと記憶が途絶えてしまい。次に気が付くと何故か消防車が目の前に止まり、消防士が立ったままの私の顔の応急処置をしているのです。なぜ救急車ではなく消防車なのかそんな疑問も湧かず、ただ消防士の質問「名前は?」「他に痛いところはありますか?」「帰れますか?」などにそれなりに答え、左顔面に大きな絆創膏を貼られ、お礼もそこそこに、その場を立ち去りました。一生懸命に自転車を漕ぎ、次に気が付いたのが、週3回来ているアルバイト先の前。応急処置を受けた所からだと、次の信号のある大きな交差点を右折しなくてはいけないのに、逆に左折してここへ来てしまったのです。3か月前まで3年間通い慣れた道だったからでしょう。
そして今、自分が帰る家はどこか、3か月前まで住んでいた新百合ヶ丘ではないのは、はっきりと判るのですが、では今どこに帰るのかが思い出せないのです。他方「徘徊」とはこのことかと冷静に自覚はしているのです。あっ、スマホでグーグルマップを見れば自宅が登録してあるはずとひらめき、早速取り出し操作してみると現在いる場所から自宅までの経路が表示され、今は鷺沼に住んでいることをはっきりと思い出しました。でも後から振り返るといつも使っているルートではなく、グーグルマップに表示された坂道の多いルートで帰ってきてたのです。
どうにか自宅にたどり着くと、家内が「どうしたの、その恰好は?」
それはそうです、顔に大きな絆創膏、メガネは歪み、洋服のあちこちに血がついているのですから・・・。
私が止めるのも無視して119番
マンションの玄関前に出ているとものの数分でパフォー・パフォー・パフォーと到着、そそくさと歩いて乗り込み状況を隊員に話すと、先ほどその様な無線連絡を聞いていたとのこと、早速本部に問い合わせると本人が大丈夫だと言って帰っていった。時間や場所からいってあなたでしたねと。さすがにどうして自分が発見されたかとは聞けませんでした。
近くの脳神経外科病院に直行、応急処置の絆創膏をむしりとられ、手縫いで七針、次いでCTスキャンと手際良いといおうか手荒いといおうか緊急の処置を受け、最後に診断。
「左目の上に裂創と左頬が骨折していますが、脳内部には影響はなかったみたいです」
ホッ
「明日、傷口の消毒。来週に形成外科で左頬の診断。1週間後に抜糸に来てください」いたって事務的に対応。そりゃそうか一日に何人も同じような救急患者を診ているのだから。
帰宅してから体や持ち物を点検すると、左肩と膝は打撲痛、両方の手のひらには擦り傷、リックに入れてあったパソコンは電池が外れケースの角が破損、それにヘルメット左側面に大きく擦り傷。
今回は、記憶喪失するほどの事故だったにもかかわらず、前回に比べて軽い怪我ですんだのはこのヘルメットのお陰だったのでしょう。
それと徘徊老人の気持ちを一瞬でも体験できたことは、かけがえのない経験でした。
頭の中で散らばったジグゾーパズルをワンピースごとに拾い集めて組み込んでいく作業。一つ一つのピースには記憶があるが、他のピースとの関連付けができず、全体像がイメージできない心細さという感じでした。
それにしても性懲りもない。
反省しきりです。
バインダー「年寄りの冷や水」
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