2月1日に発刊予定の「マスコミ市民」2月号に掲載予定の「国際社会における名誉ある地位をまもるために」と題する寄稿文をお届け致します。
6.でヴィデオゲーム、スマホなどが前頭葉に与える問題、母性文明を志向する組織「ソウル・オブ・ウイメン」等に言及致しました。
2. の「日本の無責任な日本の現状」は、最近報じられた英国への原発輸出など深刻さを増しております。
2号機とその脇の排気筒は強大な地震と竜巻によっても倒壊され、その結果膨大な放射能が拡散し東京も住めなくなることを専門家は度重ねて警告しております。福島県庁も重大視しております。この警告は世界各地で天災が想定外の被害をもたらしている最近の情勢に鑑みれば、国の存立の問題として深刻に受け止めるべきことを同寄稿文は改めて訴えております。
「国際社会における名誉ある地位をまもるために」 引用元:「マスコミ市民」2018年2月号
福島原子力事故が世界に拡散しつつある放射能汚染は日本が地球環境加害国であるとの批判を招きつつあります。特に、事故の教訓を学ぶことなく原発の再稼働を進める日本の現状 に関して、内外の市民社会は厳しい批判の目を向けておりま す。「国家の品位」までが問われだしているのです。日本国憲法の序文が掲げた「国際社会における名誉ある地位」を確保するために日本は動き出さねばなりません。このため、平和憲法のお蔭で戦後克ち得られた平和国家としての国際的信頼を回復することが至上課題であることは論を待ちません。 無責任、不道徳が深刻に嘆かれる最近の世相は哲学が究明する歴史の法則を意味する「天地の摂理」を想起させます。老子の「天網恢恢疎にして漏らさず」の教えの通り不道徳の永続は許されないのです。 日本が直面する最大の課題は福島事故処理ですが、深刻な緊急課題は地震学者が警告する福島第一原発2号機及びその脇に立つ排気筒への対応です。2号機の建屋は震度7クラスの地震が発生すれば崩壊し、排気筒は強大な竜巻によっても倒壊され、その結果放射能が拡散し東京も住めなくなることを専門家は度重ねて警告しております。国としての存立の問題です。東京五輪を返上し福島事故収束に向けて全力投球することが求められているのです。
1.福島事故の教訓 福島原発事故により、そのもたらす惨禍は人間社会が到底受け入れがたいものであることが示されました。このような事故を生む科学技術は、その可能性がいかに少ないかにつき如何なる数値が援用されようとも完全にゼロでなければお払い箱にするべきであるとハンス・ペーター・デュール博士(元マックス・プランク原子力研究所長)は主張しております。エルンスト・フォン・ヴァイツゼッカー教授(同名のドイツ大統領の甥)からも全く同感であるとの連絡を頂いております。この「ゼロ原則」こそ福島事故からまず学ぶべき教訓だと信じます。また、これに劣らず重要な教訓は経済重視から生命重視への転換です。後述の通り福島事故は経済至上主義という父性文化がもたらした破局です。経済重視から生命重視への転換には女性が主導的役割を果たすことが期待され、かつ予見されます。こうした考えは事故直後に国会で公述人として述べております。 これらの教訓を踏まえれば、エネルギー問題は原発から自然エネルギーへの転換が取るべき選択であることは論を待ちません。しかしながら、まるで福島事故がなかったかのごとく原発促進の広告が再開され、再稼働が住民の避難対策が不備のまま認められるなど不道徳が罷り通っております。国際社会は東京五輪が福島隠しに利用されていることを見抜いております。事故処理に全力投球していないことの傍証とみなしております(汚染水対策の国家プロジェクトは凍土壁建設の345億円のみであり、東京五輪には1.2兆円規模を見込む!)。
広島、長崎、福島を経験した日本は歴史的使命を帯びるに至りました。それは民事、軍事を問わない真の核廃絶の実現に決意を持って貢献することです。この立場からすれば日本として核兵器禁止条約に対して取るべき姿勢は論を待ちません。広島・長崎の被爆者の方々の長年にわたる努力がこの度のノーベル平和賞受賞により報われたことは、核兵器のみならず原発もない世界の実現に向け、国際市民社会の連帯が期 待できる新たな段階を迎えたことをも意味すると思われます。小泉純一郎元総理及び細川護煕元総理が「原発ゼロと自然エネルギー推進」の立法化の国民運動に向けて動き出されたことは画期的朗報です。
2.無責任な日本の現状 いま日本で起きていることで国民に猛省を迫ることがあります。超一流企業が犯す不祥事が後をたたないことです。こうしたことの真因は今や世界的現象と言える倫理の欠如だと思われます。未来の世代に属する天然資源を乱用して枯渇させ、永久に有害な廃棄物と膨大な負債を後世に残すことは、倫理の根本に反します。自然と世界の資源はもたらす結果についてはお構いなしに開発されているのです。 日本については次のような具体例を挙げることが出来ます。 1,000兆円を上回る負債は未来の世代に対して到底申し開きが出来ません。 地震大国、津波大国に原発を作ることは「巨大な過ち」であることは明白です。その是正に乗り出すべきなのに、なんと再稼働を進めているのが現状です。 原子力安全保安院が欠陥があるがゆえに原子力規制委員会 に改組された際、当然行うべき総点検はなされませんでした。 しかも原発の安全に関する責任の所在が曖昧のまま放置されているのです。原子力規制委員会は原発の安全確保の責任を有さないことを公言しております。 内閣総理大臣がその責任を負うことも明確にされていないのです。 こうした無責任な姿勢が社会全体にみなぎっているとしか思えません。 福島事故処理への対応に全力投球することなく、東京五輪を無反省に推し進める現状は内外からその証左と見られております。 後世に禍根を残す重大事故の事後処理を一私企業体である東電にだけ任せておくべきではなく、国が前面に出て、国民に情報を公開し、廃炉への道筋も国の責任で明らかにしなければならないとして、事故処理の国策化を求める国民の声は確実に高まりつつあります。国は国策として進めた原発推進の全責任を負うべきです。
3.国際社会の動き 国際市民社会は民事、軍事を問わない真の核廃絶に向けて静かに動き出しております。 2017年9月14日から17日まで、核戦争防止国際医師会議(IPPNW)や核軍縮スイス弁護士協会等の主催により「核時代の人権、未来の世代及び犯罪」をテーマとする国際会議がスイスのバーゼルで開催されました。同会議は脱原発を志向する市民社会にとり歴史的第一歩と見なしうる下記の画期的提案を盛り込んだ最終宣言を発出しました。 (イ)核兵器の使用及びその他の健康と環境に無差別の被害をもたらす核活動は国際刑事裁判所のローマ規定が定める人類に対する犯罪に含めるべきである。また、ローマ規定を修正しECOCIDE(環境破壊)を犯罪とすることを求める (ロ)1958年にIAEA及びWHOとの間で結ばれた、原子力の民事使用の健康に及ぼす影響に関する自由な情報の開示を制限することに関する協定は破棄されねばならない。 本宣言は「世界の命運は電力会社により左右される」との 福島事故が立証した警告に対する決定的な対応といえます。最も恐ろしく有害な物質である放射能を作ること自体を犯罪とすることを求める動きが漸く国際的に始まりつつある感があります。また、国内的には放射能汚染を公害とする立法化の動きも伝えられております。 皮肉にも日本は福島事故と東芝の経営危機により意図せず脱原発の促進に貢献し出しております。原子力の全方位の破壊力(地球環境、国家、組織、個人)は益々立証され、認識されております。市民社会は全ての独裁は終焉せしめられるという歴史の法則(天地の摂理)で慰められ、これに支えられております。日本の現状は、すべての悪事は露見するという天地の摂理(歴史の法則)を実感させており、これが国民の良識の存在をも実感させており、新たな時代の到来を予感させるに至っております。 私の活動に対する国際的支援も強まりつつあります。 国際NGO「自然解決事業団」(Natural Solutions Foundation)は、福島第一原発事故以降の私が発出した全ての英文メッセージを伝える『Draft “Crisis of Civilzation” eBook』 (THE CRISIS OF CIVILIZATION)をまとめ、リンク先に掲出しました(2016.12.10)。(※村田光平オフィシャルサイトをご参照ください。) 2017年3月25日には中国の若者に人気のあるサイト、「April Media」の記者のインタビューを受けました。私から最近、地球物理学者で地震学の権威の竹本修三名誉教授の後述の警告に言及したところ同記者はこれに深い関心を示し、翌々日急遽京都に赴き、竹本名誉教授のインタビューを行うなど中国が原発に対する警戒を一段と強めつつあることが看取された次第です。 2017年4月、閣議了解されたヒトラーの「わが闘争」および「教育勅語」の教材採用は海外でも波紋を巻き起こしました。4日18日、中国外務省はファシズム及び軍国主義は根絶されねばならず、日本は若者に正しい歴史教育を行うべきであるとの趣旨の声明を発表しました。国際的に著名なエルンスト・フォン・ヴァイツゼッカー教授より八木毅駐独大使宛に抗議の書簡が発出されました。同書簡はこの度の決定により、平和主義に立脚する日本国憲法は冒されることとなるとして、八木大使にこの決定が取り消されるよう全力を尽くすよう要請しております。その後、同教授より八木大使から ”Mein Kampf” の教材使用はナチ批判と戦争の悲劇の防止という目的に厳密に限定されているとの文科省の声明を伝える書簡を受領した旨のメッセージが寄せられましたが、同声明は日本では発表されていないのは問題です。その後も一部閣僚のヒトラーに関する物議を醸す発言が報じられ、今後イスラエル他ユダヤ人からの反発が懸念されます。トランプ大統領はエルサレムヘの米大使館の移転を決めるなど親ユダヤ的立場を明確にしております。
4.福島危機と東京五輪 2018年1月10日の「天声人語」に東京五輪批判がみられます。 「思えばきしみや歪みが目につく東京五輪である。招致活動に対する疑惑、エンブレムの盗作騒動、さらには競技場の工期を急ぐゆえの過労自殺まであった。日本開催の魔力から、もう少し距離を置けないものか。」 東京五輪は招致に際しての公約に全面的に違反し、オリンピック国際委員会(IOC)は誰も信じない “under control”の再確認を求める各方面からの要請に未だ応じようとしておりません。放射能の拡散が続く福島での野球、サッカーの開催について、著名なRobert Hunziker米記者は、「史上最悪のメルトダウンを起こし、100% out of controlの危険きわまりない福島での五輪競技の開催」を決めた責任を厳しく問いつつ、「福島での継続するメルトダウンから関心をそらすのが東京五輪の狙いである」と断じております。福島第一を隠せても米国西岸に到達している太平洋の汚染は隠せません。「頭隠して尻隠さず」です。 さらに注日されるのは地震による倒壊が度重ねて警告されている2号機建屋のすぐ脇にある排気筒(120メートル)の問題です。 2013年に地上66メートルの接合部に8ヵ所で破断や変形が見つかっております。2011年の事故時に起きた建屋の水素爆発などの影響とみられます。2017年2月にも上から45メートル付近の支柱に新たな破断が一カ所見つかっております。 この排気筒では2011年から毎時20シーベルトを超えるような高線量が観測されており、今も排気筒の周囲は危険区域となっています。 元東京電力の社員である桑原豊氏は週刊誌のインタビューに対して、「心配なのは排気筒の倒壊。中に溜まっている100兆ベクレル以上とされる放射能に汚染された粉じんが、大気中に一気に噴き出します」と指摘しております。広島原爆(87兆ベクレル)を上回る放射能です。 100メートル超の構造物を遠隔操作で解体する工事は前例はなく、東電は福島県の企業が提案した技術を基に装置の開発を進めており、2018年度中に解体の着手を日指すと言われております。 福島第一の2号機問題および排気筒問題は福島県庁も危機感をもって国に対応を真剣に申し出ております。竹本修三京都大学名誉教授は各方面の有力な専門家の意見も取り入れ、現場で震度7の地震が発生すれば2号機の建屋は崩壊し、東京も住めなくなる旨、また、中途半端な形で保持されている核燃料デブリが格納容器の底に溜まった水中に急速に落下したらどうなるか早急に検討を要すると訴えております。県庁関係者からは「竹本修三先生(京都大学名誉教授・大飯原発京都訴訟団長)の報告文を読みました。先生の論点(即ち燃料デブリの全容が把握できていない。M7クラスの地震動による影響が懸念されること、炉内構造物が長期に補修されることなく放置されることによるリスクが心配されること)は、どれも廃炉問題の本質を射貫くものと思います」との迪絡を最近受けております。 震度7の地震が発生すれば2号機の建屋やその脇の排気筒も崩落し、これに伴う膨大な放射能の拡散がもたらしうる惨禍は容易に想像できます。何故、メディアも国民もこれが日本にとり緊急の最優先課題であることを認めようとしないのでしようか。 このような状況のもとで東京五輪の返上を求める声は内外で高まりつつあります。
5.国連倫理サミットの提唱 浸透した経済至上主義は現世代の倫理の喪失をもたらし、その結果、現世代は利己主義によって未来の世代を犠牲にし、天然資源を濫用して繁栄を築いています。この倫理の欠如は全世界を覆っており、責任感及び正義感の欠如と相俟って人類と地球の将来を憂慮させるに至っております。この倫理観、責任感及び正義感の「三カン欠如」は日本病、そして世界病を生んでいるのです。 人類が直面する危機の真因は、世界中にあまねく広がった倫理の欠如です。 最強の権力の最大の敵は倫理道徳であることを悠久の歴史が立証していることをあらためて想起する必要があります。 日本は民事、軍事を問わない完全な核廃絶の実現を訴える歴史的使命を有するに至りました。核兵器のない世界を掲げるオバマ前米大統領のヴィジョンを軍事、民事を問わない真の核廃絶に高める必要があるのです。同前大統領は母性文化の国際的潮流を生むという歴史的役割を果たしたと高く評価しております。ケネディ前駐日米大使の前任のルース大使から在任中に3通の書簡を頂きましたが、私の活動がオバマ前大統領の目標に向かって協力することの重要性を想起させるものとして感謝するという趣旨のものでした。 民事、軍事を問わない核廃絶実現には2つの前提条件があります。地球倫理の確立と父性文明から母性文明への転換です。その出発点となりうるのは国連倫理サミットであるとの確信から2008年より各方面にその開催を訴えはじめました。2013年ユネスコクラブ・協会世界連盟は3・11を地球倫理国際日とすることを決定するに至りました。潘基文前国連事務総長は2013年3月2日付の私宛書簡で加盟国が国連総会に上程するならば喜んで同サミットの開催を支持するとの立場を述べられております。
6.父性文化と母性文化~父性文明から母性文明への転換を訴える 現在人類が直面する危機は文明の危機です。2001年発行の拙著「新しい文明の提唱~未来の世代に捧げる」で「倫理と連帯に立脚し、環境と未来の世代の利益を尊重する新しい文明」の創設に取り組むべきことを訴えました。これが母性文明の定義です。現在の文明は、「父性文化に立脚する力の父性文明」といえるものですが、これを命に至上の価値を与える「母性文化に立脚した和の母性文明」に転換する必要があります。男性が主役を演ずる父性文明から女性が主役を演ずる母性文明への転換です。 この趣旨に賛同し、新たな組織を起ち上げ、女性の社会進出を奨励する動きが内外で始まっております。3年前にはノーベル平和賞に3度ノミネネートされている著名な平和活動 家、Scilla Elworthy博士は “Rising Women、 Rising World” を発足させております。2年前には五井平和財団の西園寺昌美会長が広中和歌子元環境大臣などとともに「ソウル・オブ・ウイメン」(The Soul of women)を設立しております。 父性文化と母性文化の別表の比較表の説明をさせていただきます。 父性文化は「競争、対立、力」に価値を置くのに対し、母性文化は「和、協力、弱者に対する思いやり」を重視するのです。 今日の世界においては、富めるものと貧しいものとの格差が益々拡大しつつあり、父性文化が支配的です。2つの文化の間に均衡と融合を図る必要性が益々認識されるに至っております。父性文化は破局を招くことを歴史は示しております。 2008年8月20日、北京オリンピックの開幕式に於いて、2008名が繰り出す情景の一つに「和」の文字が描かれたことに深い感銘を覚えました。「母性文化」はアジアにおいて広く共有されるものであり、日本で最も守られてきたことが想起されたからです。本来日本は和と連帯を特徴とする母性文化を有しておりました。明治維新後、軍国主義という形で競争と対立を特徴とする父性文化が導入されました。歴史は父性文化が最終的には破局に通ずるものであることを示しております。福島事故は終戦後導入された経済至上主義という別の形態の父性文化が招いたものです。父性文化は福島という破局を生んだのです。 北朝鮮問題を含め国際紛争の解決には対話を重視する母性文化的思考形態が不可欠です。 ここで女性と男性の特徴について一言すれば、女性については感性を、男性については知能を挙げることができます。 心すべきことは感性の制御のない知能は利己主義に陥り易いということです。これが内外で指摘されて久しい「エリートの挫折」の背景だと思われます。 父性・母性比較表に関して若干敷衍させていただきます。 〈他者との関係〉では自己中心に対して連帯、競争に対して調和、対立に対して協調、弱者切捨てに対して弱者への配慮、排他性に対し開放性、厳格に対し寛容、ヒエラルキーに対し対等と対称振りは明確です。 〈自己実現との関係〉は重要です。知性重視に対して感性のバランスが重視されます。これに関してはチャップリンがその映画「独裁者」で示した次の見解から感性の重要性につき啓蒙されます。 「我々は考えすぎて、感じることがあまりにも少ない。我々が必要としているのは機械よりも人間愛であり、利口さよりも思いやりと優しさである」 強欲に対しては少欲知足ですが、マハトマ・ガンジーは「地球は各人の生存のために必要とするものは満たし得るが、各人の貪欲は満たし得ない」と述べております。これはグローバリゼーションが逢着する諸問題の背景を説明するものです。 「少欲知足」は、欲望を減らすことにより幸福を極大化することを可能にするもので、現在見られる消費の極大化の追求と対照的と言えます。 これは幸福=富÷欲望であるとする釈迦牟尼の教えと軌を一にするものです。この数式では欲望は分母であり、富は分子です。 権力に対しては哲学ですが 世界が直面する危機を前にして、古代ギリシャのプラトンが「王さまは哲学者になるべきである。さもなければ人類の不幸は無くならない」と述べていることが想起されます。今日、哲学の欠如により世界は理想を失い、民主主義の究極の目標たるべき『最大多数の最大幸福』は忘れられております。 〈頭脳との関係〉では左脳に対して右脳です。右脳は感性を司るものであり、人類の叡智を収めているところとも言われ重視されます。ヴィデオゲーム、スマホなどが重要な右脳の前頭葉に与える影響は看過できないと思われます。世界保健機構(WHO)は遂にこのほどネットゲーム依存を国際疾病分類(ICD)に盛り込むことをきめたと伝えられます。 右脳の発達を促し、感性を養うには、可愛い子には旅をさせる、若いときは苦労を買ってでも経験させるなど日本で伝統的に言われてきたことが効果的と思われます。挫折が人生の貴重な経験であることに通ずるものです。
7.天地の摂理 ここで冒頭言及した天地の摂理について付言いたします。 これは天の摂理(providence)に代わるものです。哲学により究明される歴史の法則を意味します。多くの例示が可能です。「盛者必衰の理」、「絶対的権力は絶対に腐敗する」、「いつまでもすべての人をだますことは不可能である」、「全ての独裁は終焉せしめられる」、「不道徳の永続は許されない」、「善き思い天が助ける」などです。天地の摂理は多くの文明の興亡に立ち会い、時の試練に耐えております。 最近の世相は老子の「天網恢恢疎にして漏らさず」(天道は厳正で、悪事を働いた者には必ずその報いがある)という名言を想起させます。これも天地の摂理に通ずるものがあります。 核エネルギーなしの長期にわたる人類と地球の安全のために、我々はライフスタイルに関して短期間の犠牲を払う覚悟が必要です。自然・再生可能エネルギーが倫理と連帯に立脚し、環境と未来の世代の利益を尊重する母性文明の基盤となり得ます。 地球倫理、母性文明及び真の核廃絶という三位一体の目標は日本の歴史的使命です。困難に満ちた厳しい現実にかんがみれば楽観できません。しかしながら上述した天地の摂理こそ、人類と地球の将来に我々が希望を抱くことを可能にしているのです。
村田光平(むらた みつへい)さんプロフイール 1938年生まれ。元駐スイス大使。1961年東京大学法学部卒業後外務省入省。以後、中近東第一課長、国連局審議官、宮内庁御用掛、公正取引委員会官房審議官、衆議院渉外部長、駐仏公使、駐セネガル大使などを歴任。1999年から2011年まで東海学園大学教授。2000年から京セラ(株)顧問、稲盛財団評議員。現在、日本ナショナルトラスト顧問、日本ビジネスインテリジェンス協会顧問。東海学園大学名誉教授、天津科技大学名誉教授。 著書『新しい文明の提唱 未来の世代へ捧げる』(文芸社)、『原子力と日本病』(朝日新聞社)、『現代文明を問う』(中国語・日本語小冊子)、『歴史の危機の入り口に立つ日本』(共著 ごま書房)。 |
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村田光平
(元駐スイス大使)