『うさぎくんとかめくん』 作・曵田原宏
よく晴れた青い空に白い雲がぽっかりと浮かんでいます。 うさぎくんがはらっぱに寝転んで空を見上げています。 すると誰かの声が聞こえてきました。 「うんとしょ、よいとしょ、うんとしょ、よいとしょ」 見るとそれは頭にハチマキをまいたカメくんでした。 ハチマキには『がんばれマラソン大会』と書いてあります。 「うんとしょ、よいとしょ、うんとしょ、よいとしょ」 「おーい、カメくん。なにやってんだい?」 「うんとしょ、よいとしょ、うんとしょ、よいとしょ」 「おーい、カメくんったら。なにをやってんだい?」 「うんとしょ、よいとしょ、うんとしょ、よいとしょ やあ、ウサギくん。みればわかるでしょ。 かけっこのれんしゅうさ」 「え~~っ『かけっこのれんしゅう』だって?」 「うん、そうだよ。 うんとしょ、よいとしょ」 「はっはっはっは。それでもかけているつもりかい?」 カメくんの足が遅いのを、ウサギくんはバカにして歌いました。 「♪ もしもしカメよカメさんよ せかいのうっちで おまえほど あゆみののろいものはない どうしてそんなにのろいのか♪」 カメくんは歌で言い返しました。 「♪ なんと おっしゃるウサギさん そんならおまえと かけくらべ むこうのおやまのふもとまで どちらがさきにかけつくか♪」
「ウサギくんの足が早くても、わたしの方が勝ちますよ」 「そんな事を言ったって、口先だけだ。 では、競争しよう? そうすれば、わかるさ」 ちょうどその時こぶたくんが自転車をこいでやって来ました。 自転車の前かごにはサツマイモがいっぱい入っていました。 「やあ、かめくんとうさぎくん」 「やあ、こぶたくん。ちょどいいところにきたね。 きみ、いまひまかい?」 「なにかようかい?」 「これからぼくとうさぎくんがかけっこするから 『よーい、どん』っていってくれる?」 「いいけど、どこがゴールだい?」 「そりゃあ、やっぱり『むこうのお山のふもと』でしょ」 「むこうのおやまのふもとかぁ。あっ。ちょうどいいぞ」 「なにがちょうどいいんだい?」 「いまね、たぬきくんとね、きつねくんとね、ねこくんがね、 『やきいもたいかい』するじゅんびしているんだよ。ぼく、でんわしてみるね。 ぴっぽっぴっぽっぱっぽっぷ ぷるるるる ぷるるるる」 「ぴっ、もしもし」 「もしもし、たぬきくんじゅんびはどうだい?」 「やあ、こぶたくん。あとはおいもがとどいたらおっけーだよ」 「あのね、いまからうさぎくんとかめくんがかけっこしていくから ゴールつくっておいてくれるかい?」 「うん、わかった。じゃあね、ぴっ」 こぶたくんは棒っきれを拾うと地面にスタートラインを描きました。 「うさぎくんかめくん。よういはいいかい?いちについてぇ」 『よ~い、どん』 うさぎくんとかめくんは走り出しました。 「チリリン、ぼくさきにいってまってるよ。ふたりともがんばってねぇ。」 ピョンピョンのピョン うんとしょ、よいとしょ ピョンピョンのピョン うんとしょ、よいとしょ ピョンピョンのピョン うんとしょ、よいとしょ ゴロリン ピョンピョンのピョ~~ン うーん うーん うーん 「…あれ~」 うさぎくんが振り返ると 逆さまにひっくり返ったかめくんが起きあがれずにもがいています。 「あらら、かめくん ぴょんぴょんのぴよよよよ~ん」 うさぎくんはかめくんを助け起こしました。 「こんどはころばないではしってよ。」 うさぎくんはかめくんのこうらをポンとひとつたたいて また走り出しました。 ピョンピョンのピョン うんとしょ、よいとしょ ピョンピョンのピョン うんとしょ、よいとしょ ピョンピョンのピョン ピョンピョンのピョン よく晴れた青い空には白い雲がぽっかり、 ピョンピョンのピョン いい天気です。 ピョンピョンのピョ~~~ン 大きな木がありました。そよ風そよそよ、木陰は涼しそうです。 「ちょっときゅうけい。ひ・と・や・す・みっと」 なんてったって寝つきのいいウサギくんです。 いち・にい・さん・すやすやすや。 なんと3秒で寝いってしまいました。 うんとしょ、よいとしょ うんとしょ、よいとしょ うんとしょ、よいとしょ うんとしょ、よいとしょ うんとしょ、よいとしょ 「うんと・・・あれっ。うさぎくん。うさぎくん。 こんなところでねてたらかぜひきますよ。うさぎくん」 「むにゃむにゃむにゃ」 「うさぎくん。」 かめくんはうさぎくんを起そうとしましたがすっかり眠りこけています。 かめくんはハチマキを外すと 「かぜひかないでよ」とお布団の代わりに鉢巻をかけてやりました。 うんとしょ、よいとしょ うんとしょ、よいとしょ うんとしょ、よいとしょ うんとしょ、よいとしょ しばらくたって 「あっ、しまったねすごした。あぁーあ」 うさぎくんは大きくのびをすると、そのままゴールに向かいました。 ピョンピョンのピョン ピョンピョンのピョン ピョンピョンのピョン 「 よーし、もうすぐゴールだ…と、あれれれれ?」 自分が勝ったと思っていたのに、 何とカメくんが先にゴールしていました。 ぱちぱちぱちぱち ぱちぱちぱちぱち 「うさぎくん、にちゃ~く。」 コブタくん、タヌキくん、きつねくん、ねこちゃんそしてカメくんが 大きな拍手でウサギくんを迎えました。 そしてみんなで焼き芋を食べました。 お・し・まい
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