私が鷺宮高校を卒業したのは1967年のことで、まだ日本の社会が、右肩上がりの高度経済成長を遂げていたときでした。ちょうどTVがモノクロからカラー放送に切り替わるころで、当時のニュースなどを見ると、まだまだモノクロの映像が多かったことに気が付きます。鷺宮高校はその歴史が、女子高から始まったこともあり、私の時代にも成績優秀な生徒は、どちらかというと女子に多く、男子学生は肩身の狭い思いをした記憶があります。
あれから、35年が経ち、わが国は高度成長から低成長へと転換して、特にここ数年はマイナス成長かゼロ成長といった様相すら呈しています。まさに、右肩下がりで、おそらく、鷺高生の皆さんのなかにも、自分たちの時代はどうなっていくのかと将来に悲観的になっている人も少なくないと思います。
私は現在の政治家の一人として、これからの日本を担う若い人たちが、将来に希望を持てなくなっていることに大いに責任を感じます。例えば、具体的には、現在国の借金は600兆円以上ありますが、国の借金は60年かけて返済することになっていますから、この借金を作ったのは現在の私たちの世代でも、これを返すのは次の世代の若者たちになってしまうのです。ですから、これからはもうこれ以上国や地方の借金を増やさないことを、現在の世代、特に政治家は次の世代に約束をしなければならないでしょう。
もちろん若い世代も、「生まれた時代が悪かった」と嘆くのではなく、日本をこれ以上沈没させないためには自分たちの努力も必要です。そのポイントは女性の持っている能力を、今以上にもっともっと引き出すことにあるのではないでしょうか。21世紀は不確実な時代だとか、不透明な時代だとかいいますが、はっきりしているのは、20世紀の男性優位の時代に替わって、21世紀は女性の時代になるということです。これは世界的な潮流だと思いますが、日本が世界に先駆けて、女性の能力が全面的に開花する社会を作っていくことが肝心です。雇用の機会の平等はもちろん、女性が働きながら子供を産み、そして男女が一緒になって子育てをやる、そうしたことが当たり前の社会を作って女性の活力によって、21世紀の日本の未来を切り開いていってもらいたいものです。
政治の世界にだって、もっともっと多くの女性が進出してもらって、現在の永田町の男性中心の政治を打ち破ってもらいたい。私はそういう人が出てきてくれたら、いつでも全力で応援します。私が鷺高の後輩の皆さんに贈る応援の言葉は「Boys be」ではなくて「Girls be ambitious」です。
九十周年記念誌より