ピーマン&ぴーまん、けれどぴーまん
子どもたちが始めた口喧嘩。悪口の「へっぽこあたまの、じゃがいもあたま」Vs「なかみからっぽぴーまんあたま」 中身がびっちり詰まっているジャガイモ頭のイメージに対して中身空っぽのぴーまん頭なのです。 さてこの『からっぽ』は視点を変えてみるとまんざらマイナスイメージだけではなさそうです。ばぶさん童話の中から今回は『からっぽ』というお話を紹介します。
からっぽ (第3稿) (前略) 「ここなにやさんですか?」 まいちゃんがにっこりと答えます。 「からっぽやさんです。」 「からっぽひとつくださいな。」 「どんなからっぽがいいですか?」 「どんなからっぽがありますか?」 「おおきなからっぽからちっちゃなからっぽまで いろいろいろあります」 リュックの中をガサガサ探して 「それじゃぁ、このおべんとうばこにぴったりのからっぽください」 「ありがとうございます。どんないろのからっぽにしますか?」 「どんないろのからっぽがありますか?」 「どんないろのもあります。」 「じゃあ、ピンクのからっぽください」 「はい、かしこまりました。 えーと、どんなにおいのピンクがいいですか?」 「おはなのにおいのピンクをください」 「はい、かしこまりました。えーと、 あまいのと、すっぱいのと、にがいのと、しょっぱいのと あります。 どれにしますか?」 「う~~ん。あまずっぱいのはありませんか?」 「ええ~と、ごめんなさい。あまずっぱいのうりきれでーす。」 「うりきれですかぁ。あまずっぱいのがよかったんだけどなぁ」 「だいじょうぶです。いまからつくれますから、 ちょっとまっていてくれますか。」 「わーい、うれしいな。」 「では、このおなべのなかに、あまいのとぉ。それから・・・、 すっぱいのをいっしょにいれてぇ、かき・まぜ・まーす。 はーい、できあがりでーす。 ちょっとあじみしてみてください。どうでしょうか?」 しゅうちゃんは舌をぴちゃぴちゃ鳴らして味見しました。 「うーん、ちょっとあますぎです。」 「あますぎですか、それではすっぱいのをすこしたしてみますね。 あっとっと、たいへん、たいへん。ちょっといれすぎちゃいました。」 しゅうちゃんは小指で鍋のふちをさらってペロリ。 「あれ、さっきのとちっともあじがかわりません。」 「えっ、そうですか? かきまぜ方がたりなかったからかしら。 ちょっとまってください。ぐるぐるぐる、ぐるぐるぐる」 まいちゃんは腕まくりをするとお鍋の中をかきまぜました。 「ちょっとたいへんそうですね。」 「ええ、これってちからがいるんです。」 「おなべもっているのてつだいましょうか?」 しゅうちゃんはお鍋がぐらぐらしないように両手で支えました。 「わぁ、たすかります。ありがとう。 ぐるぐるぐる、ぐるぐるぐる。はぁ。」 「だいじょうぶですか?」 「あせがめにはいりました。すみません。 ちょっと、ぐるぐるこうたいしてくれますか?」 「ええ、いいですよ。ぐるぐるぐる、こんなかんじでいいですか?」 「うわぁ、あなたじょうずですね。」 まいちゃんに褒められてしゅうちゃんは嬉しくなりました。 「それほどでもないですよ。ぐるぐるぐる、ぐるぐるぐる。」 「いやぁ、あたしよりもだんぜんじょうずです。」 「そうですか?ぐるぐるぐる、ぐるぐるぐる」 「けっこうちからがいるでしょう。だいじょうぶですか?」 「ええ、だいじょうぶです。ぐるぐるぐる、ぐるぐるるるるるぅ」 「なんか、さっきよりもだんだんスピードがでてきていますよ。」 「そうですかぁ?。ほんきでやったら もっとスピードでますよ。 ぐるぐる るるるる ぐるぐる るるるる ぐるるる るるるる るるるる るるるる うんうんうーんうん」 「ストーップ」 「きゅきゅぅうううう。」 やっとかきまぜるのを止められてしゅうちゃんはほっとしました。 「わーっ、きれいなピンクいろになっていますねぇ。 わーっ、あなたのほっぺもきれいなピンクです」 「いやぁ、ちょっとだけくたびれました。」 「そうでしょう。そうでしょう。おみずいっぱいいかがです?」 「ありがとう。ごくごくごく。おいしかった。ごちそうさま。」 「ちょっとあじみしてみましょう。ぺろり・・・うう~ん」 「どうですか?」 「あなたもあじみしてみてください。はいどうぞ」 「ありがとう。ぺろり・・・うう~ん」 ふたりはいっしょにいいました。 (後略) ぴーまんの果肉に包まれたあの空間はどんな『からっぽ』?どんな意味がある? おいしさの余白であり、ピーマンの夢や希望が詰まった『うろ』であり、ピーマンの果肉のおいしさを作り出すための必然がから
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