クルミをかじる音で見つけたリス。夏への衣替えが進み、オレンジ色の肌の色が見えていますね。灰色は冬毛です。夏毛はもっと短く黒ずんでいます。
合唱練習の帰りに見た夕焼け。芭蕉の「あつき日を海に入れたり最上川」とはこんな風景でしょうか? いや、風車はなかったか?
迷犬ハッチくんはビーグル犬。群れで吠えながら獲物を負うハウンド系の猟犬で、ウサギ狩りに特化して小型化した犬種だそうです。そのため、吠えることでコミュニケーションをとろうとすることと、他の犬との協調性が高いことが特徴だとか。ハッチの場合、犬だけでなく、人でも、時にはカラスやネコにも「遊ぼう」と誘います。でも、その気持を大声で表現するので、たいていは伝わらず、相手を怖がらせたり、引かせたりする結果になります。
散歩で出会う友だちは、嘱託警察犬のキャロル(黒いラブラドル)と黒柴のココちゃんだけ。ココちゃんは若い雌で、遠くから見つけると物陰に隠れて待ち伏せしています。そして、突然跳びかかってきて遊びに誘うのがかわいい女の子で、ハッチはメロメロ。隠れているつもりでも、全身見えているのがまたかわいい。
他の犬はハッチが吠えるので怒ったりします。なかには、怯えるように飼い主の陰に隠れてしまう犬も。そんな1匹がケンちゃんです。サイズも形も黒のラブラドルに見えるのですが、どことなく違うのでミックスなのでしょう。おとなしい犬で、リードを離してもトコトコと飼い主について歩きます。
飼い主はぼくたちよりも年上の夫婦で、散歩で会う他の犬の情報や、森にある山菜についての知識などを教えてくれることもありました。近所で家出をした犬の心配や、森をうろつく迷い犬の心配をしていて、世話好きなひとなのだなと思うこともよくありました。酒田には話好きな人が多いのか、つい長話になってしまうことがあるのですが、この人たちもそんな人たちでした。
ところがあるころから、このカップルと1匹とはあまり会わなくなり、たまに見かけてもご主人の姿がないのです。そして、女性の方も、私たちと会うことを避けているのかと思うような素振りを見せることもありました。
ぼくたちは「ご主人が亡くなったんじゃないか?」とささやきあったものです。先に歩いていたご主人が高校の門の前で休んでいると、後から来た奥さんがケンのリードを離す。するとケンがトコトコと嬉しそうにご主人の方に歩いて行く。ハッチとは打ち解けないケンだけど、この飼い主夫婦のことが好きで信頼しているのだなと思ったものです。あのご主人が亡くなってしまったのではないか。それは、たまたま女性と会った時に、彼女は言わなかったけれど、それを匂わせるような話しぶりだったことからも伺えたのでした。
彼女が、音楽を鑑賞することが好きで、コンサートなどにも行くことがあると聞いていたので、先日、市の合唱祭のパンフレットとチケットをポストに入れておきました。すると、その日の夕方、彼女がケンを伴って我が家を訪ねてくれたのです。そんなつもりはなかったのに、チケット代を持ってきてくださり、コンサートには友人と行くつもりだということでした。
やはりご主人の消息についての話はなかったものの、亡くなったという前提の、それも私たちも既に知っているという前提での話でした。すっかり意気消沈してしまい、今でも涙が止まらないこと、生活時間が不規則になり、散歩に行く時間も不定期になってしまったこと、なにより、他の人と、特にカップルとは会いたくない気持ちが強いのだということなどを、訥々と話しました。
そして、あの健気なケンくんは、その間もじっと待っているのでした。きっと彼は、女性の悲しみを受け止めて寄り添っているのだなと思い、目頭が熱くなりました。そしてまた、女性もこうして人に少しづつでも話をすることで、気持ちがほぐれていくといいのだけれどと思い、おせっかいなことをしてしまったような気もするけど、一種の傾聴ボランティアをしたつもりでいようと思いなおしたのでした。
それでも、彼女が世話をしなくてはならない犬がいたから良かったのだなと、心から思ったのでした。そうでなければ、もっともっと落ち込んでしまい、ひきこもってしまっていたかもしれないと思うのです。